感染者増も「クリスマスを!」強気な英国のなぜ オミクロン株まではマスクさえしていなかった

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11月30日に「公共交通機関や飲食店を除く店内ではマスクが必須」となった。逆をいえば夏以降、11月29日までは医療機関や空港などの一部を除き、マスク着用は義務化されていなかったのだ! 

イギリスの各国(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)で多少のルールの違いはあるが、イングランドでは夏以降、現在に至るまでソーシャルディスタンスの指針は変更されておらず、不要のままだ。集団がパブやバーで密になり、マスクを着用せずに飲んで騒ぐ姿は、コロナ以前に戻ったよう。

オミクロン株でも厳しい規制はなし

さらに「職場のクリスマスパーティや、学校でのクリスマス降誕劇は中止をせずに、予定通り開催しよう」と、11月30日にはジョンソン首相みずから声明を出している。海外からの渡航者の入国に関しても、日本のような厳しい制限は現在のところ設けていない。

なぜイギリスはここまで「余裕」ともとれる態度を崩さないのだろうか?
ここで新型コロナ感染者の死亡率と入院率を挙げよう。

冒頭でも触れたが、イギリスの新規感染者数は突出して多く、昨年のピーク時を例にとれば、2020年クリスマス頃に入院した感染患者の数は2万人台、3万人台を連日記録して、死亡者数はしばらくの間、1日1000人を超えていた。

ところが、夏以降は感染者数は変わらなくても入院患者数や死亡者数は、昨年と比べて大幅に減少している。しかも現在、ICU(集中治療室)に入るほど新型コロナ感染が重症化したり死亡したりするケースの多くは、コロナワクチン未接種であるという統計が出ている。要するに、コロナワクチンを2回接種している人であれば、万が一感染しても、重症化しにくいということだ。

ジョンソン首相が「クリスマスパーティを中止しないように」と声明を出した際、「2022年の1月末には、ブースター接種はほとんどの人が終わっているのだから」と述べたことからもわかる。首相の自信ある発言の根源は、ワクチンにあるのだ。

ここで、イギリスのコロナワクチンの接種率を振り返ってみたい。

2020年12月、世界に先駆けてワクチン接種が始まったイギリスでは、ワクチン接種プログラムによって、大量の人たちに次々とワクチン接種をしていった。

一方、ワクチン接種での最大の懸念は、打ち手である医療従事者の確保だった。そこで国はなんと、非医療従事者をワクチンの打ち手として活用をする方針を出したのだ。筆者も本業の病院勤務の傍ら、大規模ワクチンセンターで接種のアルバイトをしているが、そこにはサッカーコーチやキャビンアテンダント、シェフなど、さまざまな職業の人が、ワクチンの打ち手として活動している。それを監督するのは正看護師の仕事で、日本のように医師が配置されることはない。

こうして大量のスピードワクチン接種を行っていったイギリスだが、現状、2回接種を終えた人は、11月30日のデータで69.4%にとどまっている。ちなみに、2021年前半の段階で若干のワクチン接種に遅れが出ていた日本は、12月1日の時点ですでに約77%が2回目の接種を済ませている。

それでは現在、感染が激増している欧州各国はどうだろうか?

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