フランスは70.2%、ドイツは68.6%、イタリアは73.1%(いずれも11月30日現在、2回目接種済みの割合)。日本よりもワクチン接種の開始が早かった欧州だったが、気がつくと日本にかなり差を付けられている。特にドイツとイギリスは70%にも満たない。
欧州各国でワクチン未接種の人は、接種待機者ではなく、「ワクチン拒否者」と考えられる。当然、日本を含めたどこの国にもワクチン接種を拒否する人はある程度は存在するだろうが、イギリスのケースをみると、「ワクチンの副反応が怖い、不安」というのではなく、拒否する理由はもっと根深く、複雑な背景があるようだ。
まず挙げられるのが、文化や宗教、信条などだろう。実際、コロナワクチンは「動物実験をしているから」と接種を拒否したヴィーガン男性が、コロナ感染で亡くなったことは、大きく報道された。
また、ロンドンスクールオブエコノミクス(LSE)の調査では、ワクチン接種者の分布をみると、地域差が大きいことが明らかになった。確かに、地域ごとにみると、都市部は接種率が低い傾向にあり、特にロンドンの中心部で2回目のワクチン接種を済ませた人の割合は、50%台にとどまっている。他方、地方では接種率80%台と高い。
この地域差について、LSEは「移民と密接な関係がある」と指摘している。接種を拒否するグループは、移民など少数派が多いという。確かに、都市部は「人種のるつぼ」といわれるほど、さまざまな国から来た移民が多く住んでいる。LSEの調査結果によると、普段から差別されたり孤立したりしがちなこれらのグループは、「国が推奨するワクチン接種にも不信感がある」としている。
筆者は他民族が多く住む地方都市の中心部で勤務しているが、普段から健康診断などの受診率などは、民族間によって大きな差がある。たとえば翻訳された案内状に「当日は医療通訳も用意されます」と書かれていたとしても、参加率は芳しくない。そこには言語だけでは埋まらない大きな壁があると感じている。
ほかにも、「反ワクチン」と書かれた横断幕を掲げて、「われわれにはワクチンを受けない権利がある! 人権だ!」と、集会を開いているグループを見かけることもある。幼少期から自分の信条、嗜好を尊重される文化にあるなか、「個人の意思ではなく、国から押し付けられること」に反発する人たちも、少数だが一定の割合でいる。
約3割がすでにブースター接種済み
とはいえ、イギリスでは11月30日現在、27%がブースター接種済みだ。今のところ40代以降が対象だが、ジョンソン首相は来年1月までに全員がブースター接種を完了することを目標に掲げている。
さらにその先を見越して、新たに今後2年間にわたり、1億1400万回分のワクチンを確保したとの報道もある。筆者のバイト先である大規模ワクチン接種センターからは、「シフトを今後どれだけ増やせるか?」などの書面調査もあり、新たにバイト募集も始まった。
接種者を記録するオンラインシステムはすでに構築済みで、すぐにでも使用が可能だ。しかも、前回までに大量のスピードワクチン接種を経験しているため、自信があるのか行動が早い。ジョンソン首相が「クリスマスパーティはちゃんとやろう!」と余裕を見せる根拠は、確かにあるのかもしれない。
未知の変異株、オミクロン出現のままクリスマス、新年を迎える。ジョンソン首相の余裕が年が明けても続くことを、ただ願っている。
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