辻元氏が語る衆院選「敗因総括」と「維新の強さ」 「憎悪」と「対立」の政治土壌が広がっている

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けれども中盤以降、耳に入る情報はどんどん厳しくなっていった。渡嘉敷(奈緒美)さんの大阪7区が落ちた、左藤(章)さんの大阪2区も落ちた、宗清(皇一)さんの大阪13区も危ない……と、自民の現職が次々と維新にひっくり返されていく。最後の砦が私の10区。維新はここを狙って終盤に集中砲火してきました。10月29日には吉村さんが高槻に張り付き、駅などで大きな演説会を4回やった。最終日の30日には松井(一郎・大阪市長)さんが入った。

私の発言が火を点けた面もあるかもしれませんが、それ以上に『辻元さえ落とせば大阪を完全に制覇できる』という維新の征服欲のようなものを感じた。多様な人たちと議論を交わし、政策の方向性を見いだす本来の民主主義ではなく、数の力で一色に塗り潰してしまえという考え方には危うさを感じます」

筆者は高槻市をはじめ大阪・兵庫で吉村知事の街頭演説を見たが、その圧倒的な人気と動員力は、頻繁なテレビ出演で増幅された面が間違いなくあるだろう。「テレビで吉村さんを見て政治に関心を持った」「今一番勢いのある人。生で見られて嬉しい」と興奮気味に話す人もいた。

ローカルだからこそ支持されてきた維新

しかし、維新の強みはそれ以上に「大阪の政治行政を10年にわたって握ってきた事実」が大きいと感じた。辻元氏の指摘する組織力もそうだが、吉村知事は演説で私立高校無償化、中学校給食の導入と改善、公園の民間委託による整備など──誇大表現もあり、検証は必要だが──市民に身近な「改革実績」をアピールし、「改革で財源を生み出してきた。これを全国に広げる」と訴えていた。

およそ国政選挙の争点と言えないような話でも、聴衆に聞けば「私たちと同じ目線で語ってくれるから、話が具体的でわかりやすい」「言うだけでなく実際にやっている」という反応が多かった。大阪のコロナ死者数の多さを指摘しても、「それはまず国の責任」「政府にはっきり物を言ってくれる」「失敗しても何もしないよりいい」と高評価は揺るがない。加えて、選挙後に話題となった文書通信交通滞在費のように国会議員の特権を指弾する「身を切る改革」が共感を呼ぶ。

「ローカルだから眼中にない」と辻元氏は言ったが、ローカルだからこそ維新は支持されてきた。そして大阪での「実績」をアピールすることで、周辺地域へじわじわと支持を広げている。辻元氏は「国会目線」ゆえに足元の状況を見誤ったのではないか。

自身が「訴えや立ち位置を定めきれなかった」と振り返るように、辻元氏の演説は論点を絞れず抽象的に聞こえた。市民団体のメンバーが「みんなで変えよう、政治を変えよう」と周囲で唱和し、大阪に関してはコロナ対策の不備やカジノ(IR)反対を訴えたが、数千人を集める吉村知事の街宣と比べれば聴衆の差は歴然としていた。結果、従来の「固定客」へ向けた内輪の運動のように映った。

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