辻元氏が語る衆院選「敗因総括」と「維新の強さ」 「憎悪」と「対立」の政治土壌が広がっている

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「リベラル支持層が細っているのは、今回の選挙を通じて私も感じています。それはやはり、コロナで命や生活の危機を感じた人たちの不満や不公平感が大きいと思う。アメリカでバイデン大統領の支持率が急落し、トランプ前大統領の人気が再燃していると聞きますが、維新支持が広がる日本もダブって見えます。

維新という政党はかつての大阪府政・市政に対する根深い不満から生まれ、国政においては自公や民主という既成政党への不信で大きくなってきた。今回の41議席という結果は、橋下徹氏と石原慎太郎氏が組んだ2012年の54議席に比べればまだ少なく、どう見ればよいか判断がつかないところもあります。しかし来年の参院選をはじめ、勢いは当分続くでしょう。

メディアの問題も大きい。『身を切る改革』にしても、大阪のコロナ対応にしても、その実態はどうなのか、ほとんど検証されてこなかった。文通費を寄付すると言っても、実際には党や自分の政治団体へ納めているわけでしょう。コロナ報道では昨年のイソジン会見や大阪ワクチンなどが典型ですが、大阪のテレビは吉村さんの言うことを検証もせずに流し、広報番組になっている。権力のチェックという報道の役割をしっかり果たしてほしいですよね」

「おかしいものはおかしい」と言い続ける

最後に今後について尋ねた。どのような形で政界復帰を目指すか。立憲民主党やリベラル再興のために何をするべきか。答えは「わかりませんね」。即答した後、こう続けた。

「敗因をいろいろ挙げましたが、他人が悪い落選というものはなく、結局自分なんですよ。『もうちょっと修業しろ』と有権者から気づきの時間を与えられた。まずは自分を見つめ直し、足りないところや問題点と向き合います。今後の社会のビジョンを明確に示せていなかったのではないかと反省もある。このモラトリアムの間に自分がどう脱皮できるか。それがリベラルの再興につながっていくかもしれない。

その一方、(自公、維新、国民民主の改憲勢力が伸長したことで)憲法論議が軽々しく進んでいくのが心配です。変えるにせよ変えないにせよ、参院選に合わせて国民投票をするとか、カードゲームみたいに『どれにしますか。自衛隊の明記か、教育無償化か』とやるようなものじゃない。国民から『ここを変えないと人権や生活が脅かされる』と切実な声が上がって初めて立法府が受け止めるものです。そこを履き違えた政治に危機感がありますし、自分が国会にいれば、相当強く声を上げていただろうなと。

怯まず言わなきゃだめなんです。『改憲を議論することも阻むのか』と言われても、『それがなんぼのもんじゃ。おかしいものはおかしい』とご意見番のように言い続けないと。私はわりとそういう役割だったから、みんな大丈夫かな、一刻も早く私も国会へ戻らなあかんという気持ちもあって……複雑ですね」

松本 創 ノンフィクションライター

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まつもと はじむ / Hajimu Matsumoto

1970年、大阪府生まれ。神戸新聞記者を経て、現在はフリーランスのライター。関西を拠点に、政治・行政、都市や文化などをテーマに取材し、人物ルポやインタビュー、コラムなどを執筆している。著書に「第41回講談社本田靖春ノンフィクション賞」を受賞した『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(東洋経済新報社、のちに新潮文庫)をはじめ、『誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走』(140B、2016年度日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『ふたつの震災――[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(西岡研介との共著、講談社)、『地方メディアの逆襲』(ちくま新書)などがある。

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