アメリカ主催の民主主義サミットが不評な理由 「上から目線」で招集、中国に勝てるわけがない
しかも足元のアメリカ国内を見れば所得格差の拡大による貧困や人種差別が今も大きな政治問題になっているだけでなく、激しい党派対立の影響で共和党が多数を占める州の多くでは、民主党支持者が投票しにくくなるような選挙法改正が相次いでいる。とても民主主義国のお手本とは言えない状況なのだ。
加えてバイデン大統領は国内的に今、非常に苦しい状況に置かれている。民主、共和両党の対立に加えて、民主党内の左派と中道派の対立が重なって、議会での予算関連法案の成立が危ぶまれ支持率が低下している。来年秋の中間選挙を考えると人気回復のために国際社会でリーダーシップを発揮する姿を誇示したいのかもしれない。しかし、外交を人気取りに使うことは危ない火遊びにすぎない。
中国は融資や援助など実利で釣る
こんなアメリカの対応について日本政府関係者は「参加国について日本側はできるだけ包括的に対応すべきだと伝えたが、結果はそうならなかった。それ以上にオンラインでこうした会議を開いても実質的にはほとんど意味がないだろう」と距離を置いている。
アメリカの最大の外交課題の1つはいうまでもなく「米中対立」であり、「民主主義サミット」が中国への対応策の一つであることは明らかだ。そのためには民主主義であるか否かにかかわらず多くの国との協力関係構築が重要になる。にもかかわらず相変わらず上から目線で「民主主義とは何かを教えてやる」という傲慢な姿勢で110カ国に召集をかけた。これでは巨額な融資や援助などの実利をぶら下げて途上国の歓心を買っている中国に対抗することは難しいであろう。
民主主義国の結束強化を進めようという民主主義サミットが、このままでは逆に中国を利する結果に終わりかねない。
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