アメリカ主催の民主主義サミットが不評な理由 「上から目線」で招集、中国に勝てるわけがない

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「民主主義サミット」に関するアメリカ・ホワイトハウスのホームページを見ると、「民主主義国が公平で持続可能な経済的、政治的進歩を実現できず、国民の不信を招いたため、政治が二極化し、民主主義の規範や制度を弱体化しようとする指導者が台頭している。(中略)権威主義的指導者たちは、ジャーナリストや人権擁護家を標的にし、選挙に干渉し、民主主義を弱体化させるために国境を越えて手を握り合っている」などと現状の深刻さを強調している。

現在の国際社会を「民主主義と専制主義の戦い」と表現するアメリカのバイデン大統領が民主主義の現状に危機感を持っていること、その立て直しを図ろうとする意欲のあることがよくわかる。ところがサミットのやり方や参加国の顔ぶれを見ると、アメリカが何をしようとしているのかは、ハッキリしないのである。

110カ国を選んだ基準がハッキリしない

サミットにはアメリカが招待する110カ国の指導者らのほかに、NGO(非政府組織)など民間団体も参加する。取り上げるテーマは「権威主義に対する防御」「汚職への取り組みと戦い」「人権尊重の促進」の3つで、各国首脳らのスピーチのほかにも討論会などのイベントが企画されている。さらにこのサミットは1回限りのものではなく、来年も開催して参加国の取り組みの進捗状況などについて再び話し合うとしている。

3つのテーマは抽象的な問題提起としてはそのとおりだろう。しかし、現実の政治は各国首脳がオンラインで語り合えば改善されるような単純なものではない。

最初の疑問は110の参加国・地域をどういう基準や意図で選んだのかという点だ。今回のサミットは日本語では「民主主義サミット」と訳されているため、アメリカが民主主義国だと認定した国が参加するのだと受け止められてしまうだろう。しかし、実際はそうではない。

今回のサミットは英文では「Summit for Democracy」と表記されている。直訳すれば「民主主義のためのサミット」である。つまり民主主義国の指導者の集まりではなく、民主主義国を強化したり再生させるためのサミットと読める。事実、110の国・地域の中にはどう見ても民主主義国とは呼べない国が少なからず含まれている。しかし、その先が見えない。

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