アメリカ主催の民主主義サミットが不評な理由 「上から目線」で招集、中国に勝てるわけがない

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バイデン政権は同盟関係を重視すると公言しており、今回も北大西洋条約機構(NATO)加盟国(30カ国)は、トルコとハンガリーを除けばすべて含まれている。両国とも独裁国家の色彩を強めているから排除したのだろう。一方、中国が影響力を増しつつある中東諸国を見ると、参加国はイスラエルとイラクの2カ国のみで、アメリカにとって重要なエジプト、サウジアラビアも入っていない。これではアメリカが中東と距離を置こうとしているように見えてしまう。

さらに疑問なのは中国に近い国が多い東南アジア諸国連合(ASEAN)への対応だ。10カ国のうち参加するのはフィリピン、インドネシア、マレーシアの3カ国だけで、アメリカとの関係が良好なベトナムのほか、タイやシンガポール、マレーシアという重要な国が入っていない。

民主主義サミットの参加国が公表される同じタイミングで、中国はASEANとの首脳会議を開き、慣例を破って習近平主席が出席した。そして、中国とASEANの関係を最高ランクの「包括的戦略パートナーシップ」に格上げするとともに、新型コロナのワクチンの提供など多額の援助を約束するという積極的姿勢に出ていた。

バイデン政権が中国のこうした動きに対抗するというのであれば、このサミットにもっと多くのASEAN諸国を参加させるべきだろう。もちろん参加国に選ばれたからといって大喜びする国などないだろうが、逆に選ばれなかった国がアメリカに対し不快感や不信感を持つことは想定できる。

つまり民主主義を強化しようという理念はわかるのだが、参加国リストを見ると中国との「陣取り合戦」となっている現実の外交にどう対処しようとしているのかが見えないのだ。

「民主主義を教えてやる」という傲慢な姿勢

共和党、民主党ともにアメリカの歴代政権は「アメリカは世界に民主主義を広める使命がある。ときには軍事力による人権擁護の介入は必要だ」(ゴア元副大統領)という民主主義の伝道者とでもいうような意識が強い。

特にブッシュ(息子)政権では、「アメリカが発展途上国に民主主義を教えてやるのだ」と言わんばかりのネオコンと呼ばれる勢力が政権の中枢を担い、アフガン戦争やイラク戦争に踏み切って大失敗をした歴史もある。こうした傲慢ともいえるアメリカの対外姿勢は多くの国の反発を招いてきた。

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