宇宙食に「ウナギの蒲焼き」長野の老舗が挑む理由 過酷な宇宙飛行士の生活に必要な「心の栄養」

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さて、宮澤は宇宙への挑戦を「UNAGalaxyProject(ウナギャラクシープロジェクト)」と命名している。宇宙日本食の認証取得への取り組みが第1弾で、実は第2弾が11月下旬に行われた。「宇宙を360度カメラで撮りたい」という松本工業高校の生徒たち知り合い、共同プロジェクトを構想。今月中に実行する運びだ。

その内容は、気球で上空30㎞の成層圏にうな重を打ち上げ、うな重の様子を高校生の手作り機材で3次元撮影。その撮影動画をVRゴーグルで観ることで、立体的な宇宙旅行体験を行うというもの。実現に向けたクラウドファンディングでは、16日現在で280万円ほどが集まっている。気象状況を判断しながら打ち上げ地点を選定し、27日に打ち上げた。打ち上げは成功し、成層圏まで達したが、高校生手作りのカメラがうまく機能しなかったという。とはいえ、高校生たちにとっては貴重な体験となった。

「うなぎ」と「ふるさと」への熱い思い

あくなき挑戦を続ける宮澤に、今後の抱負を聞いた。

「うなぎは絶滅危惧が指摘されている生物です。私の宇宙への取り組みを通じて、多くの方々にうなぎが置かれている状況への認識を高めていただくことにつながればと考えています」

さらに、シルクうなぎを活用し、「岡谷だけでなく諏訪地域全体の活性化を図れるような取り組みを今後も続けていきたいですね。それは結果的に子どもたちの元気づけにもつながりますからね」

観光荘のシルクうなぎ(写真:筆者撮影)

生まれ育ったふるさとや子どもたちに元気になってほしいという思い、そして、うなぎへの熱い思いが44歳経営者の行動力の源になっているようだ。

地方創生は掛け声ばかりで、政府や地方自治体主導では大きな成果が出ているとは言いがたい。その間に各地で人口減少、シャッター化現象が進んでいくばかり。

地域の活性化のカギを握るのは、地元在住の若手や中堅、そしてUターン組である。彼らが中核となって、地域の独自色を追求していく行動を起こしていけば、地方の疲弊に歯止めをかけることができるのではないか。「スペースうなぎ」に挑む地方の40代青年社長の取り組み、突破力がその成功モデルになるのかどうか見守っていきたい。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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