宇宙食に「ウナギの蒲焼き」長野の老舗が挑む理由 過酷な宇宙飛行士の生活に必要な「心の栄養」
宮澤はさっそくアクションを起こした。2020年1月に東京・日本橋で行われた「宇宙日本食意見交換会」に参加したのだ。そこに長野県川上村出身の宇宙飛行士・油井亀美也氏の姿があった。今後開発が期待される宇宙食などについての話の中で、油井氏の口から「宇宙でうなぎを食べられたらうれしい」という言葉が飛び出した。宮澤にとってはまさに神の啓示のようなひと言だった。同行したスタッフと「やるしかない」と大いに盛り上がったという。
しかし意見交換会が終わってしばらくすると、事態が急変する。日本中がコロナ騒動に見舞われる事態となったからだ。宮澤も店のコロナ対策に追われ、宇宙食どころではなくなってしまった。
コロナで1年ほど頓挫したが…
それから1年ほど経ち、再び転機がめぐってきた。JAXAから2021年の宇宙日本食意見交換会リモート開催の案内が届いたのだ。
意見交換会には、2023年ごろに国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する予定の古川聡氏が参加していた。その場でまたしても大きな励みとなる言葉を聞くことができた。JAXAの職員が古川氏に「宇宙で食べたいものは何か」と質問したところ、返ってきた答えは「うなぎのかば焼き」だったのである。
このやりとりに、宮澤も一緒に参加していた社員たちも興奮しきりだったという。2年連続の宇宙飛行士からのリクエスト。うなぎ屋の主としては、もはや引くわけにはいかない。社員のモチベーションも高まる一方だ。ここから本格的な宇宙への挑戦が始まった。
さて、実際に取り組むにあたって生産現場を検証してみると、うなぎの仕入れからかば焼きづくり、真空パック詰めまでは、最新設備を整えた観光荘内の工場で行うことが可能だ。しかし、宇宙食づくりに欠かせないレトルト殺菌のインフラ、技術がない。どうするか。宮澤は宇宙ビジネスのコンサルタント企業担当者に相談した。すると、小豆島にある食品メーカーを紹介された。すでに宇宙日本食の認証を受けている宝食品という中小企業だった。協力を申し込むと快く引き受けてくれた。
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