ケニアで起業「肩書き嫁」手放した34歳女性の半生 なぜ彼女はアパレルブランドを立ち上げたのか

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

移住前、トライアルで10日間ほど邦彦さんとケニアを訪れた。想像していたアフリカの姿とはまったく違い、ケニアの首都・ナイロビは高層ビルが立ち並ぶ大都会でエネルギーに満ちていた。帰国後、邦彦さんから、ケニアで何かやってみたら?と促され、滞在中に目についたカラフルな雑貨を販売してはどうかと考えた。邦彦さんの手引きで河野さんが社長となる合同会社を立ち上げ、ケニアへ渡った。

しかし、会社まで立ち上げてきたのに、いざ移住してみると引きこもり生活が始まった。邦彦さんは仕事に奔走していたが、河野さんは英語が苦手で何もできない。1人で外出するのは危険と言われたこともあり、邦彦さんが休みの日以外は一歩も外へ出ない日が続いた。

この頃、ケニア生活を発信しようと始めたTwitterは、IDを「KawanoYOME」と登録。起業家の妻として情報発信をもくろんでいたからで、「じゃあ自分は一体、何者なのか」わからなくなりかけていた。

自分を変えたい、と強く願った理由

すっかり自信をなくしていた河野さんだったが、このままでは居られない、自分を変えたい、と強く願う理由があった。

「夫は起業したばかりで、事業がうまくいかないかもしれない。でも、この人と結婚すると決めたのは私。たとえ夫の会社が倒産したときでも、ケニアまで付いてきた私はどうなるの?と言いたくない。だから経済的にも、精神的にも自立したかった。自分の生きる道があれば、夫が失敗したときにも、また次に行けばいいじゃん、って声をかけてあげられる」

だからこそ、自立のきっかけになる「何か」をつかみたかった。

ケニアの布市場には個性豊かなアフリカ布があふれる(写真提供:ラハ ケニア)

そんなとき、アフリカ布を身にまとう現地女性たちの格好よさに目を奪われた。彼女たちは周りの目を気にせず、自分のために好きなものを着て、「これが私よ!」と言わんばかりに堂々としている。

「私もアフリカ布の洋服を着れば変わるのだろうか」。試しに1着、上下同じ布のセットアップをオーダーした。ケニアには個人事業主のテイラー(仕立て屋)が市場や路上にたくさんいて、布を渡して写真などでイメージを伝えれば、オーダーメイドで洋服を仕立ててくれるのだった。

日本にいる頃はあまりカラフルな洋服は着たことがない。上下ともアフリカ布の服を着ることに最初は抵抗があったが、思い切って着てみると気持ちが前向きになり、何でもできる気がした。その嬉しさをSNSに投稿すると、「私も欲しい」と反応があった。

アフリカ布に興味を持ち、着てみたいと思う人がいるのなら、ケニアにいる自分がブランドを立ち上げ、製品を日本に届けたら喜ばれるのではないか。ようやく、やりたいこと、挑戦できる仕事が見つかった。すでにケニアに到着してから10カ月近くが過ぎようとしていた。

まずはSNSで呼びかけ、限定5人のお客さんに自分が最初に仕立てた洋服と同じものを作ることにした。あっという間に5人分の枠は埋まり、知人に紹介してもらったテイラーに製作を依頼。製品は無事に出来上がり、ブランド最初の商品だからと、日本に一時帰国するタイミングで「試着会兼お渡し会」を設定した。ところが、ここで問題が起きた。

次ページ「試着会兼お渡し会」で問題発生!
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事