ケニアで起業「肩書き嫁」手放した34歳女性の半生 なぜ彼女はアパレルブランドを立ち上げたのか

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最近、社員と話し合い、決めたことがある。それは会社を大きくすることを目標としないようにしよう、ということ。

2020年に長女を出産。写真はナニーにおんぶされる河野さんの長女。ケニアでは自宅で子どもの保育を担うナニーを手軽に利用できる(写真提供:ラハ ケニア)

河野さんがブランドを立ち上げたきっかけは、自分が自信を持ちたかったから。そして、「~の嫁」ではなく、1人の人間として自立したかったから。

そのような純粋な気持ちから始まったのに、起業した以上やはり売り上げが気になり、ビジネスを成功させなければ、と思ってしまっていた。でも自分は本当にビジネスの拡大を望んでいるのだろうか。会社は立ち上げたら、必ず大きくしなければならないものなのだろうか。

売り上げを右肩上がりに増やしていくには、社員やテイラーの負担が増える。それよりは、自分たちなりの幸せの基準を持ち、生活できる分が稼げたら十分と考える会社にしたい。もちろん結果として売り上げが上がるのは嬉しいが、最初から目標とする数字を追い求めるのはやめようと決めた。そうすると、とても気持ちが楽になれた。

今も新しいチャレンジ前には震える

右肩上がりの成長を目指さないにしろ、このようなご時世にあっては売り上げの維持も簡単ではない。決して順風満帆ではなく、乗り越えなければいけない壁はいくつもある。社長といえども、自身の給与は会社員の頃と比べるとまだ少ない。それでも河野さんには、地に足をつけて生きている実感が満ちあふれている。それは会社員時代には得られなかった感覚だ。

10月には検品落ちの理由を明記して、通常価格より安く販売する「もったいないPOPUP」を東京で開催。大きな反響を呼んだ(写真提供:ラハ ケニア)

今秋、日本に一時帰国した河野さんは東京都内で、「もったいないPOPUP」と称し、検品落ちの商品や試作品、製作過程で余った布を展示、販売するイベントを開いた。

商品化に至るまでに大量の廃棄物が生み出されている現状と向き合い、少しでも廃棄を減らすきっかけとしてトライしてみたのだ。結果、SNSでの告知を見て多くの人が足を運び、通りすがりのお客さんも立ち寄ってくれた。

今も新しいチャレンジ前には震えるし、怖い。でも何か新しいことを始めるときには迷いや不安はつきもの。行動する前に考えすぎるのはやめた。「失敗してもいい。自分を信じて挑戦していれば、共感してくれる人は必ずいる。そもそも挑戦できること自体が幸せなのだから」。

12月初旬、河野さんは一時帰国を終えてケニアへ戻る。次はどんな一歩を踏み出すか。仲間たちとの新しい試行錯誤が始まっている。

吉岡 名保恵 ライター/エディター

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よしおか なおえ / Naoe Yoshioka

1975年和歌山県生まれ。同志社大学を卒業後、地方紙記者を経て現在はフリーのライター/エディターとして活動。2023年から東洋経済オンライン編集部に所属。大学時代にグライダー(滑空機)を始め、(公社)日本滑空協会の機関誌で編集長も務めている。

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