東武20400型、都心の顔が「北関東の主」に大変身 元は日比谷線直通車両、栃木で歩む第二の人生

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扉のあった部分をふさぐパネルはメーカーが設計どおりに造るが、「車体というのは必ず誤差があるんです」と泉川さん。長く走っていることもあり、ミリ単位だが寸法のずれがあるという。「そこをうまく合わせる技術が必要で、その『腕』のある、数字で表せないところを合わせてくれるメーカーの方々がいるんです」。同じように見える車両にも個体差があり、その改造には数字だけではわからない勘所をもった人々の技が欠かせないのだ。

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冬場は冷え込む北関東の平野に活躍の場を移しただけあって、ほかにも細かい改造や変更を各部に施している。パンタグラフは雪に強いシングルアーム型に統一。改造前は一部の車両しか装備していなかった、雪が積もった際に振り落とすための「強制パンタ上昇装置」もパンタグラフを搭載する全車に付けた。東武で「抑圧ブレーキ」と呼ぶ、積雪時に使うブレーキも強化した。いずれも雪や凍結への備えだ。

改良はまだまだ続く

2018年に運行を開始してからも細かな改良は続いている。東武のパンタグラフは、新栃木(栃木県栃木市)以北を走る車両は架線と接触する「スライダー」の材質を耐雪型にしているといい、20400型も日光方面に乗り入れるようになった際に取り替えた。

車端に設置した「出発監視カメラ」。片側の側面に2カ所ずつ取り付けている(記者撮影)

また、車体に1両当たり4カ所の「出発監視カメラ」も取り付け、2020年6月から使用している。運転台の画面で車両側面を監視でき、全国的にもまだ採用例が少ないため、同業他社からの視察もあるという。

探せば細かな違いやバリエーションがあちこちにある20400型。もともと「鉄道大好きで東武に入ったんです」という泉川さんは、「いろんな違いがある編成が好きなんですよ。20400型はとても面白い電車だと思います」という。一方で、プロの鉄道マンとして「そういった細かな違いはわからなくても、地元の方々に受け入れられて日々お客様を乗せて走っている、その姿を見ているのがうれしい」と語る。

「電車のことになるとつい力が入っちゃいまして」と笑う泉川さん。黄色と濃紺の電車は、かつてのドアを隠して3扉にしただけでなく、そんな人々の熱意や工夫も隠されている。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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