SL北びわこ号退役「12系客車」全国を旅した軌跡

オリジナル車両に残る、はるか彼方の行先表示

「SL北びわこ号」としての運行を終了した12系。今後の処遇が気になるところだ(撮影:伊原薫)
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2021年5月、JR西日本が「SL北びわこ号」の運行終了を発表した。同列車は、その名の通り琵琶湖北部エリアの観光振興などを目的として、1995年に運行を開始。春季と秋季の休日を中心に、一時はそれ以外のシーズンに走ることもあった。先頭に立つSLは、2018年春まではC56形160号機が、その後はD51形200号機がメインで、時には「SLやまぐち号」の牽引機であるC57形1号機が担当することもあり、訪れた人々を楽しませた。

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だが、2020年初頭からのコロナ禍の影響で、同年春以降は運行を中止。さらに、「北びわこ号」で使われている12系客車は40年以上前に作られたもので、煤煙の影響を受けずに感染症予防で必要とされる十分な換気が難しいこと、部品の入手が困難となり維持費がかさむことなどから、運行の継続が不可能と結論づけられた。

“復活”運転に大勢が駆けつけた

結局、「SL北びわこ号」の運行は2019年11月が最後となり、さよなら運転などもない突然の終了となった。ここで鉄道ファンにとって気がかりだったのは、残された車両たちの今後である。牽引機のSLは、「SLやまぐち号」で今後も走る機会があるだろう。だが、12系客車は運行終了の理由として挙げられた内容から察するに、このまま廃車される可能性が高い。

京都鉄道博物館で開催した「SL北びわこ号」のお別れ企画(撮影:伊原薫)

運行終了が発表されてから4カ月ほど経った2021年9月末、京都鉄道博物館で「もう一度会える、『SL北びわこ号』」と銘打った企画が開催された。普段は専用のトロッコ客車で運行されている「SLスチーム号」を、12系客車での運行に変更。「SL北びわこ号」の雰囲気を味わってもらおうというものだ。

「SLスチーム号」はスピードが遅いため、客車の窓を開けたまま走行しても車内に煙が入りにくく、換気の問題もクリアできる。本線での営業運行には使えなくても、博物館でのデモンストレーション的な運行であれば問題ないというわけだ。6日間という期間中、「SLスチーム号」の乗車人数はこれまでの実績をはるかに上回る約4000人を記録。多くの人々が、最後の思い出を作った。

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