「悟空のきもち」子供の発想をビジネス化するワケ 66万人キャンセル待ちヘッドスパの「実験」とは

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ほかにもさまざまなプロジェクトが月間に1本ぐらいの頻度で進行しているが、中でも、メンバーの子ども10人程度が参加する大きな企画が「LABO旅館」だ。10月には、1泊朝食付き24万円の「宇宙人シャワー」という宿泊プランが発表された。固定観念に縛られない子どもたちは、大人にとって“宇宙人”のようなものという発想から、プロジェクトメンバーが宇宙人に変身して宿泊客たちを迎える。テーマは“答えを探す旅”。宿泊客が持ち込むテーマに合わせてアイデアを練り、ビジネスなどのヒントになるような答えをお客に提供するのだという。

1泊24万円とは論外にハイグレードに思えるが、永野氏によると、それでもすでに数件の予約が入ってきているそうだ。

太田さんはホテル支配人を務めるとのこと。またこのたび新たにメンバーとして参加したのが鈴木美咲さん。就職活動中の大学3年生だ。

「ホテルに1カ月宿泊できるという募集要項を見て、なかなかできないことなので挑戦してみたいと思いました。今はホテルで過ごしながらやりたいことを探しています。ときどきメンバーで集まって企画を考えることはありますが、行動は自由。いろいろな子がいるから刺激を受けるし、自分のアイデアが現実になるというところに、みんな引かれて集まるのではないかと思います」(鈴木さん)

子どもたちに伝えたいメッセージ

永野氏がこれらTHE LABOのプロジェクトで子どもたちに伝えたいのが、「社会は優しい」というメッセージだそうだ。

「悟空のきもち」銀座店にて、代表取締役社長の永野弘樹氏(中央)、プロジェクトメンバーの太田旭さん(左)、鈴木美咲さん(右)。永野氏は商品やサービスを生みだしてきたヒットメーカー。「悟空のきもち」運営には社外取締役として関わっており、ヒット商品の「睡眠用うどん」なども手掛けたという(筆者撮影)

「成功者には子どものような方が多いですよね。だから社会って、“大人になったら負け”ゲームなんじゃないかと思うんです。日本の社会はルールや常識で子どもを縛ろうとするけど、それでは子どもの個性や自由な表現が失われてしまう。子どもが発想に任せて行動しても『勝てる』という雰囲気をつくってやることが大切です。THE LABOの子どもたちの例が呼び水になって、日本中がそんな雰囲気に満ちてくれば、社会がもっと活性化され、新しいビジネスがどんどん生まれるのではないでしょうか」(永野氏)

「女性なんだから」「子どものくせに」。こういった個人を縛る価値観に疑問を抱き、自由を求める声が強くなっている。しかし制度や慣習、固定観念などを覆していくためには大きなエネルギーが必要だ。楽しみながら、しなやかに立ち向かっているTHE LABOの子どもたちに学ぶべきことは多そうだ。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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