「時給高いから上京」の21歳女性を襲った"想定外" コロナ禍であぶりだされた「若者の貧困」の悲痛

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ソウタさんによると、日雇いの仕事は、募集要項には「有り」と書かれていた交通費が支払われなかったり、「制服支給」とあるのに現場で買い取りを強制されたりといった問題も多い。

「都合のいいように扱われている気がします」

ソウタさんに将来の希望を尋ねるとこんな答えが返ってきた。

「今日どうしよう、明日どうしようと考えなくてすむ暮らしがしたい」

瀬戸さんによると、緊急事態宣言が解除された10月以降、駆けつけ支援の件数は減少傾向にある。しかし、若者たちの多くは再び派遣や飲食店のアルバイトといった不安定な仕事に戻っていったにすぎない。

「コロナ災害で底が抜けてしまった社会は簡単には修復されない」

瀬戸さんはそう指摘する。コロナ禍で可視化された問題が、理由もはっきりしない新規感染者数の減少によって再び覆い隠されつつあるにすぎないというわけだ。

「甘いものを食べるの、久しぶりなんです」

冒頭で紹介したユイさんはどうなったのか。

駆けつけ支援の後、福祉事務所にも、シェアハウスの管理会社にも瀬戸さんが同行、交渉した。それにより、生活保護の利用が決まり、住まいからの追い出しもかろうじてまぬがれた。借金についても近く弁護士と相談することが決まっている。

ユイさんは「後は仕事を見つけるだけ。景気に左右されない事務職。できれば契約社員がいいです」と語る。

一時はその日の食べるものにも事欠いたユイさん。取材で話を聞いたとき、ケーキとカフェオレを「甘いものを食べるのは久しぶりです」とおいしそうに平らげた(筆者撮影)

ユイさんには後日、取材で話を聞くために喫茶店で会った。

好きなものを頼んでくださいと伝えると、チーズケーキとカフェオレを注文。カフェオレにガムシロップを2つ入れるとあっという間に平らげ、「甘いもの食べるの、久しぶりなんです」と笑った。

夜の住宅街で初めて会ったときとは別人のように豊かな表情だった。一方で20歳そこそこの若者が甘いものさえ満足に食べられない現実を思う。それこそが、今そこにあるリアルである。

(第2回は「コロナで路上生活」38歳元派遣の"10年前の後悔"

藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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