あるとき、横浜で深夜の仕事を終え、駅前で始発電車を待っていると、「住むところがないなら、うちの施設に入りませんか」と声をかけられた。
施設まで連れていかれて説明を聞いたところ、生活保護を利用することが条件のうえ、自分の手元に残るのは毎月1万円であることがわかったので、あわてて逃げ出した。後になって、そこは生活保護費のほとんどをピンハネする悪質な無料低額宿泊所といわれる施設であることがわかった。
しかし、不安定な日雇いの収入だけではネットカフェ暮らしも続けられない。夏以降は路上で寝起きすることが増え、公園の水道水しか口にできない日もあった。
公園内のベンチは中央に突起物などがあり、横になって休むことができない造りになっていることも、自身がホームレスになって初めて知った。ソウタさんは「死んでしまいたいと何度も思いました」と振り返る。
切羽詰まった様子で携帯を操作
取材で話を聞いた日も、ソウタさんは待ち合わせをしたファミレス前の路上で切羽詰まった様子で携帯を操作していた。
何をしているのかと尋ねると、「日雇い派遣の仕事を探している」と言う。しかし、究極の不安定雇用である日雇い派遣は2012年に原則禁止されている。私がそう伝えると、「じゃあ派遣じゃなくて、アルバイトかな」と首をかしげた。
実はこの日の早朝も、ソウタさんは日雇いの仕事を入れていた。倉庫からの搬出作業で、指定されたとおり、朝7時に「品川シーサイド駅」に行った。ところが、そこで担当者から「予定の人数に達したので今日の仕事はなくなりました」と告げられてしまう。集合していた10人ほどの人たちは、黙ったまま三々五々に散っていたという。
「日雇いの仕事で必要な人数よりも多めに募集することはよくあること」とソウタさんが教えてくれた。いわゆるドタキャンに備えた“保険”である。しかし、雇用保険にも入っていないソウタさんには「あぶれ手当」も支給されない。ソウタさんは交通費を節約するため、品川から私との待ち合わせ場所まで3時間かけて歩いてきたという。
ソウタさんはフルキャストやインディードといった求人サイトに登録しているほか、「タイミー」「シェアフル」などのバイトアプリをダウンロードして日雇いの仕事を探している。
条件に合った仕事があると、電話やメールで紹介されるのだという。日雇い派遣そのものに見えるし、ソウタさんも「日雇い派遣だと思っていた」と言うが、契約上はアルバイトという扱いらしい。
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