「時給高いから上京」の21歳女性を襲った"想定外" コロナ禍であぶりだされた「若者の貧困」の悲痛

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ユイさんは沖縄出身。高校卒業後、東京で働き始めた。その理由を「物価はあまり変わらないのに、時給はけっこう違う。同じ仕事なら東京のほうがいいなと思ったんです」と説明する。2021年度の最低賃金は、沖縄が820円なのに対し、東京は1041円。たしかに200円以上の差がある。

東京では雑貨店やコンビニ、清掃、飲食店などで働いた。いずれも時給制の非正規雇用。ほとんどが最低賃金水準で、手取りは月18万円ほどだった。最初は家賃約7万円のアパートで暮らしていたが、やりくりが厳しく同5万円のシェアハウスへと引っ越したのだという。

コロナ禍でアルバイトのシフトが削減された

そして個人経営の居酒屋で働いていたときに新型コロナウイルスの感染拡大に遭遇。シフトが削減され、2021年に入ってからは月収10万円の月が続いていた。この間、休業手当が支払われたのは正社員だけ。アルバイトだったユイさんは「そんなものなのかな」と思っただけで、とくに抗議や交渉はしなかったという。このころから、消費者金融にお金を借りては生活費にあてた。現在借金額は約50万円になる。

今夏、ついに居酒屋が閉店。複数の派遣会社に登録したものの、安定した収入が得られる仕事は見つからなかった。沖縄の両親もコロナ禍の打撃を受けており、援助は望めない。最近はご飯をおかゆにして量を増やし、空腹をごまかしているという。

そつなく答えているようにも聞こえるが、ユイさんの声には抑揚がない。瀬戸さんの質問に対する反応も遅い。車内に差し込む街灯の明かりに浮かんだ横顔にはほとんど表情がなかった。

「独りの部屋で、このままどこまで落ちていくんだろうと思うと、眠れなくて頭痛がして……。コロナ前の暮らしに戻りたい」

ひととおり話を聞いた瀬戸さんが生活保護の申請を提案した。ユイさんがためらいがちに「私の年でも受けられるんでしょうか」と尋ねる。

駆けつけ支援で出会う若者の多くが生活保護の利用を「周りに知られたくない」「まだ諦めたくない」などという理由で拒絶する。そんなとき、瀬戸さんは「生活保護は国民の権利。上手に利用して、上手に卒業すればいいんだよ」と説明する。

車内で30分ほど話し合った後、ユイさんは生活保護の申請を決めた。

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