ところが、その数日後、今度はシェアハウスの運営会社からユイさんのもとに「明日までに家賃の入金がない場合、強制解約をする」という旨のメールが届く。
契約上、シェアハウスは一般の賃貸アパートに比べて借主の立場が弱いことが多い。1カ月でも家賃を滞納すると、強制退去になるケースも珍しくない。実際、ユイさんの相談の前後も、同アクションにはシェアハウスからの追い出しなどをめぐるSOSが相次いでいた。
瀬戸さんは「安易な追い出しをするようなシェアハウスへの入居は勧めない」という。しかし、低賃金の非正規雇用の仕事に就いている若者にとって、敷金礼金が安いシェアハウスの魅力は大きい。いずれにしてもユイさんにとっては一難去ってまた一難である。
じわじわと追い詰められていくパターンが目立つ
新型コロナ災害緊急アクションの駆けつけ支援は、これまでに700件を超えた。そのうちコロナ解雇やコロナ切りに遭った事例は意外に少ない。
むしろユイさんのように初職から非正規雇用で、貯金をする余裕もない中で、コロナ禍によってさらに収入が減少。休業手当や福祉制度に関する知識も乏しいまま、最悪消費者金融やヤミ金からの借金を重ね、じわじわと追い詰められていくというパターンが目立つ。
住まいにしても、賃貸アパートでの1人暮らしをしている人は少数派。シェアハウスや寮付き派遣、友人とのルームシェアのほか、あるいはもともとネットカフェ暮らしだったという人も少なくない。駆けつけ支援は、こうした若者たちがコロナ禍のずっと前からぎりぎりの生活を強いられてきたことを浮き彫りにしたともいえる。
路上生活を続ける中、所持金が100円を切ったところで新型コロナ災害緊急アクションに助けを求めたソウタさん(仮名、23)も、もとは派遣労働者だった。
倉庫内作業の仕事が中心で、「希望しても、フルタイムで入れないこともあったので」毎月の手取りは13万円ほど。アパートを借りられる賃金水準ではなかったので、友人の家に間借りしていた。
ところが、コロナ禍によりただでさえ少なかった収入は半減。タイミングの悪いことに、同じころ、その友人が地元の地方都市に戻ることになり、住まいも失ってしまった。
ソウタさんの両親はすでに亡くなっているという。頼れる親戚もいない。友人宅を出た後は、ネットカフェ暮らしをしながら、日雇いの仕事で食いつなぐ日々。「建設現場とか、イベントスタッフとか、交通誘導とか、いろいろな仕事をやりました」。
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