「EV+CVT」乗ってわかったボッシュ新技術の神髄 エンジンでなくても無段変速機の特性は生きる

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②登坂路/拡大されたレシオカバレッジによってアクセル全開であってもほとんどタイヤを空転させることなく、鉄板敷きの登坂路からスルリと発進。ゆっくり踏み込んだ場合でもアクセル操作からすぐに車体が動き出すためブレーキペダルを同時に踏み込む必要がなかった。

自動車メーカーにCVT4EVの採用を積極的に促すという

CVT4EVは現在、市販化に向けてテスト走行を繰り返し成果を積み重ねている。また、乗用車だけでなくレシオカバレッジと制御プログラムの最適化によって、車両総重量であるGVW(Gross Vehicle Weight)3.5tクラスの商用車にも対応できるという。

ボッシュによると、テストを行ったCVT4EVを搭載したeゴルフは、標準のeゴルフから120kg車両重量が増えているという。これは評価用機器や使用したCVT、補機類まで含めた重量であるとのことだが、CVT4EV単体の重量は「開発中のため回答できない」とのこと。

■CVTの特性は電動駆動モーターでも十分に活かせる

今回、CVT4EV搭載車に試乗してさまざまなメリットがわかった。電動駆動モーターの最大トルク値を30%低くしても加速力が衰えないこと、さらにその状態で最高速度が上げられること、そして車両ごとにレシオカバレッジの最適化を図ることで、発進補助機能がなくとも坂道での発進加速が容易に行えること。

高速走行時でもアクセルペダル操作に対して従順に反応

つまりCVTの特性は、内燃機関だけでなく電動駆動モーターであっても十分に活かせるわけだ。将来的には、補機類を含めたシステム全体の小型軽量化を図れば車両との適合性が高まるし、制御精度を高めれば電費性能も向上させることができるため二次バッテリーの小容量化にもつながる。

現状、EVのAERについては二次バッテリーの大型化に頼るところが大きいが、全個体電池などエネルギー密度の高い新世代バッテリーが実用化されるとAERは改善されるとの見方もある。

ただ、全個体電池を開発するトヨタ自動車の経営陣によると「性能は良いが耐久性が足らず、実用化レベルに達していない」とのことだから、普及への道のりは長い。

そうしたなかCVT4EVは、既存のCVT技術を使ってコストの上昇を抑えながら、乗用車、商用車、さらには最高速度の向上という観点からはスポーツカーに至るまで幅広い分野での適合を目指す。

脱炭素社会に向けて、電動車、とりわけEVの総合性能を高めるこうした技術にも注目していきたい。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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