「EV+CVT」乗ってわかったボッシュ新技術の神髄 エンジンでなくても無段変速機の特性は生きる

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①高速周回路/筆者はこれまでeゴルフに一般道路から高速道路まで試乗する機会を得ていたが、CVT4EVでもeゴルフと同等の加速力が確認できた。最高速度は出力(PSやkw)、加速力はトルク(kgf・mやN・m)によって大方決まるが、EVは電動モーターの強みである瞬間的なトルクの立ち上がりが特徴だ。よってEVは加速力が良いと評される。

CVT4EVではプロトタイプ車両であることから、その瞬間的なトルク変化に対応できるよう専用の制御プログラムが組み込まれた。よって内燃機関のCVT車両で指摘されることの多い、エンジン回転が先行して加速力が後から追いつく、ゴムを引き伸ばしたかのような「ラバーバンドフィール」は少なく、緻密に管理された電動駆動モーター本来の走りが体感できた。

トルクを下げているのに加速も最高速度も上がる

②高速周回路/制御プログラムの変更によって電動駆動モーターのトルク値を30%も減らしているのに、加速力はむしろ①を上回る。同乗したエンジニアによれば、「レシオカバレッジを拡大すれば、さらにトルク値を減らしても素のeゴルフと同等の動力性能を出せる」という。

最高速度が85→120㎞/hにまで引き上げられるが、これは電動駆動モーターの回転数を上げたのではなく、CVTのプーリー直径を変化させることで得られた特性。からくりはこれまでのCVTと同じだが、回転制限とともに、回転域によって電力消費量が変化する電動モーターの特性に合わせることで、性能と効率の両方を伸ばすことができる。これがEVにCVTを組み合わせるひとつの利点だ。

①登坂路/鉄板敷きの登坂路でいったん停止し、「そこからアクセルを全開にして発進させるテスト」と、「ゆっくりアクセルペダルを踏み込んで発進させるテスト」、この2パターンを試した。

eゴルフと同じ車内だが緊急停止ボタンが付く(下部中央)

アクセル全開では、駆動輪である前輪に回転力が一気に加わるため、タイヤは激しく空転し、なかなか発進できない。ゆっくり踏み込めばじんわり発進するものの、左足でブレーキペダルを踏み込み、アクセルペダルに同調させながらブレーキペダルをリリースする操作を行わないと坂道を後退してしまう。

市販車の多くは、2つのペダルを同時に踏むとブレーキオーバーライド機能としてアクセル操作がキャンセルされブレーキ操作が優先されるので、こうした同時にペダルを踏み込む操作は現実的ではない。

もっともCVT4EVが市販車に実装される際には、すでに多くの市販車に普及している駆動力確保を目的としたトラクションコントロール機能や、坂道発進補助機能(一時的なブレーキ保持)が働くため問題にならないはずだ。

次ページ3.5tクラスの商用車にも対応可能
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