キャズム越えへ!掃除ロボット「ルンバ」の挑戦!《それゆけ!カナモリさん》

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 ルンバは誰が、どんな理由で買っているのだろうか。セールス・オンデマンド社に聞いてみた。

 「“ロボット”という言い方を封印したところからヒットが加速し始めたんですよ」と同社の役員は意外な話を明かしてくれた。

 「掃除をしてくれるロボット」という今まで見たことも聞いたこともない概念を、人はにわかには受入れられない。また、ロボットは日本人にとって古くは「鉄腕アトム」であり、「ドラえもん」であり、「ガンダム」だ。まだ、世に出ていないもの。空想の産物。そして、それらが形になっているとしたら、それは「おもちゃ」だ。確かに上記「アイボ」はおもちゃだ。実用化されている二足歩行ロボットのホンダ「アシモ」もあるが、とても一般家庭に導入できる価格ではない。

 故に、一般家庭では「使える道具」というポジショニングにリセットする必要があった。ルンバは洗濯機や食器洗い機などの「家電の仲間」なのだと。掃除機も食洗機も全自動。掃除も全自動でやってくれる家電があってもいいじゃないか。そんなアプローチだ。

 「おもちゃ」ではなく、「使える家電」であるという認識さえ形成できれば、結果としてそれがロボットの機能を搭載して家の中を動き回っても、日本人的には嫌悪するような感情を持つものではない。それが、アイロボット社CEOの解説の真意のようだ。

■主婦層惹きつけたルンバ

 そんな背景をもって、ルンバは「自動掃除機」というキャッチフレーズに変更された。そして、2004年から明らかにユーザー層が変わっていったという。それまで同様のマニアな層は一定数存在するものの、家庭において主に家事を担っている女性層が購入意思決定をするようになった。最近では70代の高齢者や30代共働き世帯に裾野が広がっている。まさに、単なる興味ではなく、実利を重んじる層が動き出しているのだ。70代は掃除機の上げ下ろしやコードのセットなど、肉体的負担からの解放を。30代共働き世帯は家事の時間短縮という効用を求めての購入だ。

 「掃除は汚れや散らかりというマイナスの状態をゼロに戻す作業でしかない。それを自動化することによって、空いた時間をもっと創造的な仕事をしてもらえるようにする」ということが、ルンバのある生活としての提案であると、同社役員は言う。

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