18歳息子「4回転ジャンプ」に伝承された父の技術 フィギュア鍵山優真「大逆転V」でよみがえる記憶

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あのとき、父は19歳。練習は1日4時間。「跳ばないと夢がかなわないから」と体中にあざをつくりながら必死に跳び続けた。右手と左手の大きさが違っていた。「転んで手をつくのが左手ですから」と平然と話していた。その後、負傷のリスクが高いために4回転は封印したが、あの何度も転びながら体得したジャンプの技術や感覚が、息子に受け継がれているのだと思った。

“4回転”の伝承といえば、もう一組、思い出す父と息子がいる。陸上男子ハンマー投げの室伏親子である。父・重信は外国人との体格と体重差を補うため、4回転投法を編み出した。スイングから回転、投射に至るまで、全身を使った体のひねり、地面の反発を利用する。手探りで投げ続けた選手生活の後半、ついに回転中に体を後方に傾けて加速する「倒れ込み」という技術をつかんだ。後に五輪で金メダルを獲得する長男・広治のベースにも、あの父の技術があった。

親子鷹の最大のメリット

スポーツ界に親子鷹は多い。鍵山、室伏親子以外にも、ともに五輪金メダリストの体操の塚原光男と直也や、重量挙げの三宅義行と宏実、大相撲の元大関・貴ノ花と若貴兄弟などが有名だ。ただ、アスリートの運動能力は体格や体力などの遺伝的な要素よりも、技術や練習量といった後天的な要素のほうが大きいと言われる。親が長い試行錯誤の末に見いだした技を、直接引き継ぐことができる。それが親子鷹の最大のメリットなのだと思う。

もっともスポーツ科学は時代とともに進歩する。親の技術を伝承するだけでは、世界で勝つことはできない。室伏広治は漁師の投網の動きをトレーニングに取り入れるなど、父の技に加えて独自の練習方法や技術を積み重ねて、世界の頂点に立った。鍵山優真はまだ18歳。父の指導をベースにした演技を、どこまで自らの力で進化させるだろうか。

(取材・文/首藤正徳)

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