片頭痛の人は「白い壁紙と照明」避けた方が良い訳 部屋を広く見せるには「明るい色」が定石だが…

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また、この調査は、さらに共感する人を引き寄せることにつながりました。あるとき、SNSを通して片頭痛に悩む方々にこの情報が広がっていることを知ったのです。その方は、私が雑誌の取材を受けた記事を偶然目にしたそうです。そこで私の学会発表時のタイトル「片頭痛の過敏症を考慮したインテリアデザイン」を挙げながら「インテリアによる片頭痛のお悩み解消」について投稿されていました。

引っ越しを機に部屋のインテリアが白からブラウンへ、光が昼光色から電球色に変わったことで、ご家族の片頭痛症状がずいぶん改善されたとか。私の記事をみて腑に落ちたその話を、同じ悩みをもつ人にぜひ伝えたいと情報発信されていたのです。

その投稿に反応した方々からの「頭痛が増えていた理由に気づけました!」、「確かに私も!」、「薬要らずになって良かったですね」、「母も頭痛もちなので伝えようと思います」等々行き交うコメントをみて、かつて看護師さんにいわれて嬉しかった気持ちが甦りました。

その後その方は、ご家族の片頭痛症状の変化を目の当たりにされたことでインテリアの重要性を感じ、インテリアの勉強をスタートしたことを教えてくださいました。長年インテリアに携わってきた私にとって、これほど嬉しいニュースはありませんでした。

看護師寮の事例では、引っ越しで良い場所に移るということを事前にご本人が知っていたことが影響した可能性もあります。しかし、SNSで発信してくださった方は、事前に情報がなかったのです。それでも、インテリアによる良い影響があったということは、インテリアがもつ力の存在を確信せずにはいられません。

自覚のない人も多い「光過敏」

片頭痛に悩む人は依然として多く、2020年11月にNHKで放映された『ガッテン!』でも、「ズキン! つら~い頭痛! 痛みを引き起こす意外な原因発見スペシャル」と題して、片頭痛を引き起こすメカニズムと対処法が取り上げられました。そのなかで、「睡眠不足・睡眠過多」、「ストレス」、「感情の影響」とともに「まぶしい光」が頭痛を誘発する一因になるとして、先程の看護師寮の調査事例と、環境から症状が軽減できる可能性が紹介されました。

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「アクティブ・ケア」に基づくインテリア計画は、私たち一人ひとりが自分で実践できるものです。

光過敏の自覚がない方や、日常的に頭痛で悩んでいても医療機関に行かずに民間薬でしのぐ方はたくさんおられます。しかし、光の色や内装材の組み合わせを変えるだけで日々のつらさが軽減できるなら、やってみる価値はあるはずです。

気づかないうちに、光の色や明るさが刺激になっている可能性があるということに、一日も早く気づいてほしいのです。

(引用)
尾田恵,他.片頭痛の過敏症を考慮したインテリアデザイン.日本人間工学会 第55回大会発表.2014年
* 本稿では、光の色をわかりやすくお伝えするために、白熱電球の光色に近い電球色を「オレンジ系」、昼光色や昼白色のような白っぽい光を「白色系」と表現しています。
尾田 恵 一般社団法人 日本インテリア健康学協会(JIHSA) 代表理事、株式会社 菜インテリアスタイリング 代表取締役

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インテリアデコレーター。大手不動産会社、インテリア事務所勤務を経て、2007年菜インテリアスタイリングを設立。住宅、福祉施設、TV番組など様々なインテリアコーディネート・デザイン、商品開発、情報発信などに携わる。幅広い活動で培った知識・スキルを活かし、インテリアと医療を融合したプロジェクトを基とする、身体と心の健康を目指したインテリア・メソッド「Active Care®」(アクティブ・ケア)を提唱。2018 年「日本インテリア健康学協会(JIHSA)」を設立。医療機関との共同研究にも参画し、新たなインテリアの可能性に向け活動を進めている。 現在は、自身も鎌倉でテレワーク中。

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