中国「過去の共産党員ネタにした人たち」の末路 法改正で「ブログにコメント」でも禁固刑に
中国共産党は、自らに批判的な勢力を長きにわたって取り締まってきた。チベット問題から天安門事件に至るまで、中国では共産党が政治的に不適切と判断したトピックを公に話題にする行為は厳しく制限されている。
今回の法改正は、それをさらに厳しくするものだ。以前は歴史学で研究することが許されていたテーマ(毛沢東による統治でさえ学術研究の対象にすることは一定程度、許容されていた)に触れることも、共産党に対する中傷であるとして刑事罰の対象になった。新たな刑法の下、共産党の歴史に対する侮辱を理由に行われた処罰は3月以降、少なくとも15件に上る。
「歴史虚無主義」への対抗に欠かせない措置
こうした動きからは、共産党支配の道徳的正当性を固めようとする習近平の野心が読み取れる。習は演説や論文で道徳的な要素を強調することが多い。
共産党はこれまで権力固めを、経済成長というアメと監視国家による強権支配というムチに頼ることができていた。しかし最近では、政治的・歴史的な正当性に頼ることが増えているようだと、オーストラリアの中国政策センターでディレクターを務めるアダム・ニーは指摘する。
経済成長や監視国家といった「ツールには限界がある」ため、「共産党支配の維持には、道徳的な正当性が必要になっている」と言う。
共産党の歴史に対する中傷を取り締まる法律は2018年に施行されているが、3月1日に発効した改正法により、最大3年の懲役・禁錮を含む刑事罰の対象となった。
当局は「歴史虚無主義」への対抗に欠かせない措置だとして、法改正を擁護している。歴史虚無主義とは中国高官らの用語で、国家的な公式見解から逸脱する見解を指して使われることが多い。
「不適切な見解を流布する人々は、クリック数を稼いだり注目を浴びたりしようとしているのかもしれない。だが、このような行為は明らかに道徳的、法的な許容範囲を超える」。北京の大学で法学教授をしている李梁は4月、中国共産党の機関紙、人民日報にそう語った。
改正法は、2020年6月に発生したインド軍との国境衝突で中国兵4人が死亡したという情報を当局が2月に開示した直後に発効した。その後わずか数日で少なくとも7人が、公式発表された死者数に疑問を投げかけたことを理由に起訴された。死者数は政府発表よりもはるかに多かったと伝えられる。