中国「過去の共産党員ネタにした人たち」の末路 法改正で「ブログにコメント」でも禁固刑に

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ブログなどで、共産党の歴史的人物をちゃかしただけで禁固刑になるケースも出てきている(Gilles Sabrié/The New York Times)

自宅のデスクという安全な場所から女性蔑視的なコメントを書き込む卑劣な人間たちに対し、北京在住のある女性がSNS上で批判を開始した。その行動は挑発的なものであったとはいえ、ある一線を越えなければ誰からも注目されなかったかもしれない。

この女性は、有害な男らしさをまきちらし、女性蔑視的な投稿を繰り返している人たちは、自分があたかも中国共産党の「戦闘英雄」董存瑞になったかのような気分でいるのだとちゃかすコメントを書いた。共産党は、董存瑞を国共内戦で勇敢に散った英雄と位置づけている。共産党は国共内戦に勝利し、1949年に権力を掌握した。

董存瑞を軽くネタにしただけなのに、27歳のこの女性(法廷では姓が徐であることしか明かされていない)は懲役7カ月を言い渡された。

中国の英雄や殉職者に対する中傷を罰する新たな刑法規定に違反したためだ。3月に発効してからというもの、同規定に基づく処罰は革命を彷彿とさせる熱心さで行われるようになっている。国家主席・習近平が進める弾圧策の一環だ。習は共産党の歴史観や自身が描く未来の国家像を神聖化し、絶対的なものに変えようとしている。

国民に通報を促すホットライン

中国のインターネット規制当局、国家インターネット情報弁公室は、電話とネットのホットラインを開設し、国民に違反行為を通報するよう促している。さらに10件の「噂」リストを公開し、これらを話題にすることも禁じている。

毛沢東の長征は、実際は伝えられているほど長くなかったのではないか。紅軍は、蒋介石が率いる国民党との内戦に備えて兵力を温存しようと、第2次世界大戦で日本との激戦を避けたのではないか。毛沢東の息子、毛岸英が朝鮮戦争でアメリカ軍の空爆を受けて戦死したのは、チャーハンを作るためにコンロに火を付けて居場所を知られたのが原因だったのではないか。

まさにこのような疑問を呈するだけで拘束され、訴追されるおそれがある。「絶対的な政治的全体主義が確立される兆候がみられる」と、北京を拠点とする辛口の政治アナリスト呉強は言う。

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