異例すぎる「NASA出身コーチ」が結果を残せたワケ ゴルフをロジカルで科学的なスポーツに変えた

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■フィル・ミケルソン プロフィール

1970年、カリフォルニア州生まれ。生後18カ月でボールを打ちはじめ、海軍パイロットの父親の影響で、ゴルフ以外は右利きだがスイングは左利きという変わり種。1990年、アリゾナ州立大時代に「全米アマチュア選手権」制覇。1992年にプロ転向。2004年、「マスターズ」でメジャー初勝利。2005年「全米プロ」、2013年「全英オープン」勝利。メジャーでは、唯一、全米オープンだけ未勝利。2021年、50歳11カ月7日で「全米プロ」を優勝してメジャー最年長優勝記録を53年ぶりに更新、大きな話題を呼ぶ。ツアー45勝、メジャー6勝。2012年、世界ゴルフ殿堂入り。

ペルツのすごさはそれだけではありません。科学的データに基づいたゴルフ理論を本にして、それが1999年のニューヨーク・タイムズが選ぶベストセラーにランクインしたのです。

分厚い辞書ほどの重厚感がある本ですが、そこには、彼の専門領域としたパター、アプローチ、トラブルショットについて詳細に分析した情報が詰め込まれています。スイングについては専門外のため、取り上げられてはいませんが、物理学的に計測できるパッティングストローク研究から新しいパターまで開発しています。

有名選手を指導した実績があるとか、ゴルファーとして名を知られていたというのならわかりますが、理論だけをぶら下げて、科学的なアプローチで一気に有名になったのです。

ペルツが有名になったのはミケルソンを指導したからではなく、その指導法が一般に知られるようになったことで、ミケルソンが指導を仰いだというのも興味深いところです。

ペルツの理論をミケルソンが実証

ミケルソンはペルツの指導により、見事な結果を出すことができました。それまでミケルソンはメジャートーナメントで勝利がなかったのですが、2004年のマスターズで念願の初メジャータイトルを獲得したのです。

まさにペルツの理論をミケルソンが実証したことになります。理論が実戦で証明されたというのは、そこに揺るぎない再現性があるということです。逆に、実績をもとに理論を後付けしたものだと、その人にしかできないかもしれず、再現性を担保することができません。確立された理論があり、誰が行っても再現できるなら、その信頼性は絶大です。

ペルツとミケルソンが組みはじめた2000年頃、PGAツアーはタイガーが活躍しはじめ、ゴルフはパワーゲームに変わっていきます。練習で球数を打てばいいという時代ではなくなり、フィジカルトレーニングを採り入れ、科学的なアプローチをしないとタイガーには勝てないという時代に変わっていきます。

タイガーが躍進したことでミケルソンの闘争心に火がついたのだと思います。5つ年下の若者が突如として現れてメジャートーナメントで勝ったと思ったら、その後も勝ち続けている。30歳を過ぎてなりふり構っていられなくなったことも、ペルツに教えを請う理由の1つだったのかもしれません。その結果、ペルツとのコンビで、見事に2004年のマスターズで優勝を果たすのです。

タイガーという存在がなければ、ミケルソンは自身のゴルフスキルをレベルアップしようとしなかったかもしれません。タイガーの出現により、「どうしたらタイガーのように勝てるのか」と真剣に考えはじめたというわけです。

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