『トイ・ストーリー3』--忘れがちな“無常”の概念、時間の大切さを実感して生きる《宿輪純一のシネマ経済学》

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 始まりがあれば、終わりもある。変わらないものはない、常なるものは無いということである。ちなみに最近「無常」というと、たまに『ああ無情』の無情と勘違いする人もいるので注意が必要である。

サブテーマも「さよならなんて言えないよ」ということである。アンディも大学生となり、おもちゃでは遊ばなくなる。お別れのときが来る。常なるものはない。もっとも、大学生になっても小学生のおもちゃで遊んでいたら怖いが。

しかし、人間は「無常」の概念を忘れがちである。基本的には喉元過ぎれば熱さ忘れるという性質を持っている。そのため、個人でも二日酔いをやってしまうし、経済でも歴史的に「危機」は何回も繰り返す。

最近の金融危機も「100年に1回の」という枕詞がついているが、レベルの問題があるとはいえ、経済危機は実は結構起きている。世界的な危機では、97年にはアジア通貨危機が、2000年にはネットバブル崩壊が発生しているし、細かい危機ならもっとある。その昔あった世界大恐慌も1929年からであり、100年なんかたっていない。

さらに、最近のゼロ金利政策に基づく大量の低金利の資金が世界中を駆け巡っている。ある意味、今後は高騰・暴落こそが、当たり前の金融市場になる可能性すらある。これはよろしくない。金融はあくまでも経済の循環器である。ハイパーな高血圧や低血圧が繰り返されては体が持たない。血液の流れは無理なく安定的であることが望ましい。

さらにいえば、アンディとおもちゃたちの関係と同じで、われわれ人間の人生には“必ず”終わりがある。しかも、時間には不可逆性があり、戻れない。人間にとって最も重要な経営資源は時間ということができる。Pricelessである。

いくらお金持ちでも時間は買えない。しかも、この不平等な世の中にあって万人に平等なのは人生、つまり時間ぐらいである。つまり、無駄に時間を過ごすのがいちばん良くないのだ。

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