コロナで孤立が深まった人のあまりにも深い苦悩 つながりの格差、コミュニケーションの重要使命

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要は、価値観の共有だ。コロナ禍の自粛要請では「不要不急」という言葉がニューノーマルの規範として独り歩きし、少なくない人々が恐怖の感情とともにそれを内面化した。もちろん、人と会わなくなった途端に急に健康状態が悪くなり亡くなるような事態は考えにくいが、そもそもわたしたちは不要不急でしかないような、こまごまとしたやり取り、ちょっとした交流の積み重ねによって、日々のコミュニケーションの欲求を満たしていることを踏まえると、中長期的にはQOLの大幅な低下につながることは明らかだろう。

経済学者のアンドリュー・スコットは、コロナ禍は、「変革を加速させると同時に、個人、企業、国にとって、将来のリスクへの対応力を試すストレス・テストの機会」(『LIFE SHIFT2 100年時代の行動戦略』アンドリュー・スコット/リンダ・グラットン、池村千秋訳、東洋経済新報社)になったと書いたが、コミュニケーション環境の保全に関してもこれは当てはまる。

コロナ禍で起きた関係性をめぐる2段階の転換

コロナ禍では、関係性をめぐる転換が少なくとも2段階で起こった。

1つは、既存の人間関係の整理として現れた。自粛要請に伴う人と人との交流の減少と相まって、付き合う人々の範囲が狭まったり、広がったりした。これは実りのない関係性からの離脱と、新しい関係性への参入が同時並行で進んだことを意味する。

社会学者の山田昌弘は、『新型格差社会』(朝日新書)においてコロナ禍で家族格差がさらに拡大すると警告したが、潜在していた家族間の愛情格差だけでなく、生き方といった価値観の違いが一挙に顕在化した。感染リスクやワクチン接種の評価をめぐって家族の不仲が決定的になった例がわかりやすいが、このような未曾有のストレス・テストの洗礼によって、程度の差こそあれ誰もが身の振り方、関係性の内実に目を向けなければならなくなった。

もう1つは、前述のオンラインとオフラインの使い分けで、コロナ禍でリアルなコミュニケーションの重要性に気付いて試行錯誤をした人々と、リアルなコミュニケーションから早々と退却した人々の二極化だった。これはコロナ禍以前からあった傾向がより顕著になったとみるべきだろう。

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