――そもそもなぜ『ルパン三世』を実写化しようと思ったのでしょうか?
山本:やはり国民的な支持を受けた原作やアニメだから、一応、誰も実写化したいと思うじゃないですか。でも、簡単には出来ない作品ですよ。それこそアニメファン、原作ファンが頼りなのに、『ルパン三世』を実写化しますと言った瞬間に、原作ファン、アニメファンが全部敵にまわるようなパラドックス。
もともとはKADOKAWAの池田宏之氏(ECC統括本部・実写映像推進局長)が、「又さんやりませんか。又さんに作ってほしいんです」と1年半にわたって僕を口説いてくれた。最初はこれはやれないでしょうと断ってたんです。袴をはいて、刀を持っているような男が通りを歩くような現代劇なんて漫画独自の世界であって実写映画では作れないよってね。でも昨今の映画をいろいろと観てきて、コンピュータグラフィックの技術的な進化を目の当たりにするうちに、これならリアリティを超越することができるし、それならルパンもありだよな、と思うようになったわけです。
――キャスティングも非常に難しかったのでは?
山本:結局、ルパンファンが敵になるわけですからね。キャストが分かった瞬間に、そりゃもうネットじゃ非難轟々ですよ。「やれるわけない」とかいろいろとね。でも、いつもそう思っているのですが、誰の顔色も見ないで、自分の思ったようにやろうなと。それで勝ちきることしかないと。最後には、その敵を絶対に味方にしてやると思ってやりました。
北村:やはりこれは興行的にも内容的にも外したら大変なプロジェクトだと思うんですよ。さっき又さんが「僕にとっても試練だ」と言っていましたが、絶対そうなんですよ。そんな大勝負に呼んでもらえることは本当にありがたいことですし、そこはビビってはいけない。死力を尽くしてやるしかないということですね。
最初に「新しいルパンを作る」と決めた
――「ルパン三世」自身も、コミックスやアニメなどにおいてもテイストが違いますし、どのようにでも料理できる素材だと思います。今回の実写版はどのように料理しようと思ったのでしょうか?
北村:まず、又さんと話をして決めたのは、「とにかくアニメをなぞってもしょうがない。絶対にそれはやってはいけない」ということ。これだけ長い期間、しかもいろいろなスタイルで作られたものなので、もはや正解はないわけです。『ルパン三世』とは『カリオストロの城』であるという人もいるでしょうし、『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』という人もいるかもしれない。結局、どこに寄せたところで正解はないんだとしたら、もはや映画として成立するもの、「新しいルパン三世を作るしかないね」ということを最初に話し合いました。
単にアニメをなぞろうとするだけなら、又さんも僕を呼ばなかったと思う。もしそれをやりたいなら、たとえばもっと真っ赤なジャケットを着て、(小栗)旬にもみあげをつけて、といったことになるわけですが、そういうことじゃないんだと。映画として新しいものを作ろうよ、というところがスタートだったので、難しくても目的はシンプルでした。
ただ、シンプルだから簡単というわけではなく、シンプルだからこそ難しかったわけです。まずはストーリーをどうすればいいのか、話し合いました。「もっとリアルにやらないと。コメディーというのは、日本ではなかなか厳しいよ」という話が又さんから出て。それもよく分かるが、「じゃ、そんなスーパーシリアスなルパン、誰が見たいんだよ」という話にもなってくる。
――まずは全体のトーンを決めなければならないと。
北村:さらにどこまでリアリティを追求するのかと。アニメだから成立するということも、実写でやると「なんだこれ」ということにもなる。そもそもリアリティベースで考えるのなら、泥棒が赤いジャケットを着るのか、(車なども真っ二つに斬ることができる石川五ェ門の武器)斬鉄剣なんてものもありえないわけで。でもそれをやめると言うならば、「じゃ、何のために『ルパン三世』をやるんですか。だったら小栗旬主演で『オーシャンズ11』のような、かっこいい映画を作ればいいじゃないの」という話にもなるわけです。
ただ、正解はなくても、やはり「ルパン三世」というものは、自分の子供の頃から普通に存在していたものでしたから。ルパンといえばこうだろう、五ェ門というのはこういうものだ、というのがやっぱりあると思います。ですから、原作やアニメに慣れ親しんだ人たちをくすぐるポイントは、要所要所できちんと作っておかないとダメだと思う。五ェ門の活躍だったり、不二子とルパンの関係性といった「ルパン三世」のお約束の部分はきちんとやるようにしました。
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