人生100年時代を見据える人が採るべき5つの行動 「ライフシフト2」が伝える「本当に大切なもの」

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変化は容易でなく、技術的発明に社会的発明が追いついていないために、さまざまなリスクが生まれることは間違いない。しかし、その一方で、私たちは空前のチャンスを手にしてもいる。これまでになく長く生きられるようになって、自由が広がり、選択肢も増えつつある。新しい選択肢を前にすると、不安を感じるかもしれない。それでも、私たちが個人のレベルと社会のレベルで賢明な選択をすれば、より健康に、より長く、より充実した人生を送れる可能性が出てくる。(327〜328ページより)

既存の社会的規範は崩壊し始めたかもしれないが、新たな長寿時代が内包する可能性に期待をかけることができるのだ。

すぐそこにいそうな人たち

なお、本書の説得力を際立たせている要因のひとつが、随所に登場する架空のキャラクターたちである。

たとえば20代半ばの日本人カップルであるヒロキとマドカは、これからの人生を見据え、親の世代とは違う新たな生活様式を見つけ出したいと考えている。

インドのムンバイで専門職のフリーランスとして働くラディカは、「ギグ・エコノミー」がもたらす自由を満喫しているが、今後の人生で厳しい選択が待っていることにも気づいている。

ロンドンで暮らす30歳のシングルマザーのエステルは、昼は高級スーパーのレジ係のアルバイトをし、夜は老人ホームで働いている。そのため、安定した正規雇用の職に就くことを望んでいる。

アメリカ・テキサス州ダラスに住むトムは、40歳のトラック運転手。妻と、すでに成人した息子と共に暮らす。注目すべきは、彼が自動運転車の進化に目を向け、新たなテクノロジーが自身の仕事にどんな影響を及ぼすのかについて考えている点だ。

オーストラリアのシドニーで暮らすインは、55歳の会計士。パートナーとは離婚しており、先ごろ解雇を言い渡された。携わっていた業務が自動化され、年齢と職歴に見合う給料を支払えないと判断されたからだ。自分ではまだ何年も生産的な職業生活を送れると思っているが、現実との折り合いがついていない。

『LIFE SHIFT2(ライフ・シフト2):100年時代の行動戦略』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

クライブは、イギリスのバーミンガム近郊に住む71歳の元エンジニア。65歳で引退し、妻や4人の孫たちとの日々を楽しんでいるが、お金の問題が気にかかるため仕事に復帰したいと考えている。また、その一方で、地域コミュニティーに携わりたいとの思いも抱く。

このような“すぐそこにいそうな人たち”の生き方や考え方、苦悩などが映し出されているため、読者はそれをわがことのように、あるいは知人の悩みを聞いているような感覚で受け止めることができるのだ。

また当然のことながら、それは最終的に各読者のこれからの生き方ともどこかで交差していくことになるのである。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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