産業リサーチ(航空) 再編後でも、「2弱&番外地」の構造変わらず

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「羽田の発着枠」というのが、日本の航空業界の免罪符だ。空港には物理的な条件などから発着回数(発着枠)に限りがある。需要の多い空港で多くの便を飛ばせられれば、実入りも多くなる。日本で最も利用者数が多いのが羽田だから、どの航空会社もたくさんの発着枠を欲しがる。が、数に限りがあるので役所が配分する。
 これが発着枠に関する構図だ。大手は「効率的なネットワークを張れない」と低収益の言い訳をし、新規参入組は「便数が増やせず装置産業においてのスケールメリットを享受できない」と赤字の責任を転嫁する。国際線は世界的な競争にさらされるため、国内線で稼ぐのが日本以外でも定石だが、「羽田の発着枠に限りがあるから……」というわけだ。
 JALとJASの経営統合も、ここに遠因があったとも言える。バブル崩壊後、負の遺産処理に追われたJALは90年代初頭に経営危機に陥った。リストラの結果が出始めた時に起こったのが同時多発テロ。国際線主力のJALの業績は暗転する。国内線を強化するには、すでに弱体化していたJASを実質的に吸収合併する以外に方法はなかった。統合でリストラののりしろも発生する。
 両社の統合で羽田の発着枠シェアは国内首位のANAと拮抗、今度はANAの尻に火がついた。価格決定権を統合会社に奪われ、2002年度は安値攻勢の対応に追われて大赤字。対策として国内では不採算路線からの撤退、収益路線の増便などを実施する一方、破綻したエア・ドゥの再建を支援する形を取りながら実質的に傘下に収めた。スカイマークエアラインズにも機材リース、整備で関係を結ぶ。 赤字の国際線もテコ入れを急ぐ。
 ただ、現在の競争は既存の客を奪い合うだけで、新しい需要創出に結び付かない消耗戦の様相を呈している。両社とも損益分岐点が高く、有利子負債比率も約6割と収益構造、財務基盤の改善がむしろ急務だ。
 新規組も悩みは深い。スカイマークエアラインズは主力の福岡線に鹿児島線を追加したが、相乗効果が出ているとは言いがたい。4月に予定しているANAが撤退した青森、徳島への乗り入れにも疑問符がつく。
 宮崎線のスカイネットアジアは様々な支払遅延を起こすほど資金繰りが苦しく、宮崎県の支援がなければ行き詰まる。那覇線のレキオスは就航以前に資金のメドが立たず、事実上の解散状態となっている。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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