感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ、追加接種が不可欠

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問題は感染予防だけではない。これまで、ワクチン接種を済ませておけば、たとえデルタ株であろうが、感染しても重症化しないと考えられてきた。わが国では、今夏、デルタ株が大流行したのに、第3波、第4波ほど死者数は増えなかったのもワクチン接種の恩恵と考えられている(図3)。そうなると、ワクチン接種による、このような重症化予防効果がいつまで続くかが大きなポイントになる。

図3

イスラエルの経験は、重症化予防効果も、意外に早く低下する可能性があることを示唆している。図4はイスラエルと日本のコロナ感染者の致死率の推移を示したものだ。イスラエルでは、今年3月から7月にかけて致死率が上昇している。特に5、6月の致死率は5%以上を維持し、5月23日には9.5%、6月14日には9.4%に達した。

図4

この時期、決して死者の総数が増えた訳ではない。イスラエルの夏の流行で、死者数が増えるのは8月以降だ。以上の事実は、重症患者が増えて、病床が逼迫したため、致死率が高まった訳ではないことを意味する。なぜ、こんなことが起こるのだろうか。

ワクチン接種を終えて4カ月後に起きた変化

私は、基礎疾患を抱える高齢者でワクチンの効果が切れ始めたためと考えている。イスラエルは2020年12月19日から、高齢者・持病を抱える人・医療従事者を対象にワクチン接種を開始した。2021年1月末の接種完了率は21%。イスラエルの高齢化率は12%だから、1月中には高齢者の接種を終えたことになる。致死率が急上昇した5月は、ワクチン接種を終えて4カ月となる。

イスラエル政府は、この致死率急上昇に焦った。7月11日には免疫力の低い人を対象に追加接種を始める方針を明かしている。注目したいのは、7月11日の人口100万人あたりの感染者数は51.4人だったことだ。その1週間前の7月4日の33.8人からはやや増加したが、イスラエルで感染者が本格的に増え始めるのは7月後半で、同月末には237.6人に達している。

イスラエル政府は、ワクチン接種を済ませた人に感染するブレイクスルー感染が増え始めて、追加接種を検討したのではない。私は、コロナワクチンの効果の持続性に当初から疑問を抱き、春以降致死率が高まってきたことを考慮したからではないかと考えている。

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