COP26の焦点「第6条」各国が対立する本当の理由 「市場メカニズム」交渉の行方はどうなるか

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世界全体の排出削減を促進するためには2重計上を防止することが重要である一方で、企業間のクレジット取引に対しても適用することは、企業によるクレジット獲得のための投資を阻害しかねないという懸念を表明している団体も存在する。ただし、仕組みが緩すぎると、CO2削減の取り組みが実効性を持たなくなりかねない。

現に2020年以前は、お金を払って獲得したクレジットで企業活動からの排出量を相殺することが一般的に行われていた。「2050年温室効果ガスネット(実質)ゼロ」を目指すと発表している企業が相次いでいる中、クレジットを購入してきて自社の排出量削減に振り向ける行為はあくまでも補完的・過渡的なものと考えるべきであり、本来は自らの努力による排出削減対策を取り組みの中心に据える必要がある。

いずれにせよ、COP26で第6条をめぐるルールづくりで三たび失敗することになると、途上国での排出削減の進展にも悪影響が生じかねない。

日本にとってのパリ協定第6条の意義

日本にとってもパリ協定第6条のルールづくりの行方は非常に重要だ。日本は6条に基づく仕組みとして、2013年から途上国へ日本の持つ低炭素技術やインフラ等を供与することで生み出した温室効果ガス排出削減・吸収量を日本の削減目標の達成に活用する二国間クレジット制度(以下、JCM)を17カ国で実施している。

JCMについては、太陽光や風力・水力などの再生可能エネルギーや省エネ、バイオマス発電のプロジェクトが200件以上も実施されている。閣議決定された地球温暖化対策計画では、2030年までに官民合わせて累積1億トンのクレジットを、JCMを通じて創出することを目標にしている。

パリ協定第6条とは上述の通り、第6条が認めた取引の仕組みに参加する国が自国の排出削減目標にクレジットを使用できるようにするものである。今回のCOP26で第6条に関するルールが合意されれば、今後、日本がJCMクレジットを活用し、適切な方法で国際的にしっかりと進捗を報告していくことになる。

JCMはパリ協定第6条においても先進的に実施されているメカニズムであり、JCMを通じた2重計上の防止や報告の経験は、参加する他国にとってもよい事例になるだろう。この分野において知見を持つ日本には、交渉におけるリーダーシップの発揮が期待されている。

髙橋 健太郎 地球環境戦略研究機関(IGES)副ディレクター

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たかはし けんたろう / Kentaro Takahashi

コンサルティング会社にて官民向け地球温暖化対策支援に携わった後、2009年にIGES入職。国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)やG7・G20など国際プロセスの動向分析や、炭素市場の調査研究に従事するほか、本年4月より脱炭素化を模索する企業や自治体向けの気候変動ウェビナーを開催し、炭素市場トラックを担当。

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