第6条のルールメイキングの交渉が始まったのは、2015年にパリ協定が採択されてからだ。
第6条は、パリ協定に参加する国が温室効果ガスの排出量を削減するプロジェクト(再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進、植林など森林関連のプロジェクト等)を通じて獲得したクレジット(二酸化炭素などの削減量)を、各国の温室効果ガス削減目標の達成に使用できるようにする仕組みの基礎となるものである。
もともと2018年にポーランド・カトビチェで開催されたCOP24でルールが決定されるはずだったが、COP24、COP25と2年連続で合意が得られなかった。COPでは、全会一致の方式でルールが採択されるため、少数であっても参加国から反対意見が表明されれば採択できない。
第6条交渉の「3つの論点」
なぜ、COP24とCOP25で合意が得られなかったのか。
第6条には、特に重要な論点が3つある。
1つ目は、獲得したクレジットから得られる収益の一部を使った適応策に関する支援のあり方だ。適応策とは、すでに起こりつつある、あるいは起こりうる気候変動の影響に対して、自然や人間社会の在り方を調整し、その影響の防止・軽減のための備えを行うことである。具体的には、渇水対策や農作物の品種改良、堤防の建設など、さまざまな施策がある。
2つ目は、過去に京都議定書に基づく「クリーン開発メカニズム」(以下、CDM)という制度の下で発行されたクレジットを、新たな枠組みであるパリ協定の下で取引・使用できるようにするかどうかである。
そして3つ目は、クレジットの2重計上を防止するためのルールをどのように設計するかだ。
たとえば技術協力により、ある国におけるプロジェクトでCO2排出の削減ができた場合に、それにより生み出されたクレジットを両国間で分け合う。その場合に、削減量が両国でダブルカウント(重複計上)されないように、きちんとしたルールにより分け合うことが必要だ。
しかし、これら3つの論点は、COP25でも交渉の最終局面で各国の合意が得られなかった。
COP26議長国であるイギリス政府は、COP26で合意を得るための政治レベルで「議論すべきもの」としてこれら3つの論点を重要視し、2021年には閣僚レベルの会合が複数回開催された。にもかかわらず、各国間の溝は埋まっていない。
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