この3つの大きな論点については、COP26の2週目に閣僚レベルで議論され、妥協点を見出すべく努力が続けられることになる。前述の1つ目のポイントである「適応支援」に関しては、防災など適応分野に対する資金支出拡大を要望する途上国と、支出拡大に慎重な先進国との間に意見の対立があり、どのような形で資金支援について合意を得られるかが注目される。
2つ目のポイントである、過去のクレジットの取り扱いについては、ブラジル、インド、中国など一部の国を除いて、ほとんどの国が2020年以前のクレジットをパリ協定で使用することに反対している。
過去の排出削減プロジェクトにより生み出されたCDMのクレジットを将来の排出削減目標の達成のために使用することは、労せずして削減の数字を積み増すことに等しいため、パリ協定で求められる実効性のある大幅な削減に貢献しないというのがその理由だ。つまり、過去に頼らず、世界全体または各国の温暖化対策の水準を上げていく削減プロジェクトを形成することが必要だという考えによるものだ。
その場合、パリ協定の下で、使用できるCDMクレジットの量をどの程度許容するかがポイントになる。
2重計上を防止するためのルールに関しては、取引するクレジットすべてに対して適用すべきだというのがほとんどの国の意見であるが、一時的なルール適用の免除措置を求める一部の国との間での議論が紛糾する可能性がある。
第6条合意による炭素市場への影響
COP26で合意が期待されるパリ協定第6条のルールづくりの行方は、民間企業がメインプレーヤーとなる排出権取引など炭素市場に与える影響も大きい。特に「相当調整」といわれる仕組みがどうなるかについて、関係者の注目が集まっている。
相当調整とは、クレジットの移転元である国が移転したクレジット量を自国の排出量に上乗せする一方、クレジットを獲得した国が自国の排出量から獲得したクレジット量を差し引くことで、排出削減量の2重計上を防止するというルールだ。
これまでの交渉では、国同士が取引するクレジットに対して、相当調整のルールを適用することについて主に議論されてきた。しかし、2021年の前半に入ってから、炭素市場関係者が集まるオンライン会議でも、企業間でのクレジット取引を主に行う自主的炭素市場に関して、2重計上を防止するための相当調整導入の可否が議論されるようになっている。
2020年9月に国連気候行動特使・ファイナンスアドバイザーであるマーク・カーニー氏(元イングランド銀行総裁)が設立した「自主的炭素市場拡大タスクフォース」は、相当調整の適用の是非についてはパリ協定第6条のルールづくりの結果を待つという方針を発表している。
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