筆者は、広く国民に現金を届けるバラマキ政策を悪いと思っていない。むしろ、特定の業界や企業を利する不公平な重点的(同時に利益誘導的)財政出動よりも、はるかに「よいもの」だと思っている。
純粋でかつ大規模なバラマキ政策の代表は「ベーシックインカム」(国民に一律に一定額の現金を定期的に支給する政策)だが、各種の具体的なバラマキ政策は、ベーシックインカムをいわば「ベンチマーク」(=比較の基準)とすることで評価できると考える。
ベーシックインカムの「7つの長所」
政策としてのベーシックインカムの長所を以下に列記する。
② 給付側を一定に固定して税金などの徴収を調整して「差額」の再分配をコントロールできる、公平な分配政策だ(税制が公平ならその程度に応じて公平なはずだ)
③ 給付は現金で使いみちは自由なので、国民の選択に政府が介入しない
④ 一律の給付を行うだけなので、所得や資産の調査などの手続きが不要で効率的だ
⑤ 定額給付なので「働いたら収入が増える」から、過大な額にしない限り勤労意欲を阻害しない
⑥ 受け取る際に「恥」の感情を持たずに済むし、手続きが不要な(生活保護よりも圧倒的にいい)、心理的負担の軽いセーフティーネットだ
⑦ 既存の社会保障を置き換えると行政コストの大幅な削減が可能だ
ちなみに、ベーシックインカムに反対する意見の中に、「財源が足りない」というものが少なくない。だが、国民にお金を配っているのだから、同じスケールの増税は可能なはずであり(国民全体の担税能力が増えているから)、財源は「必ず」ある(ベーシックインカムの弱点はそこではない)。
ただし、ベーシックインカムの支給開始と同時に同額を増税するのはマクロ経済政策として不適切だし(矢野次官にはぜひ理解してほしいポイントだ)、どの程度の規模の再分配を行うかについては国民的な合意形成が必要だ。「誰もが遊んで暮らせる」ほどのベーシックインカムを配る必要はないし、今の日本経済にその実力はたぶんない。
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