激烈!メディア覇権戦争--新聞・テレビ・出版×アップル・グーグル・アマゾン…新しい支配者は誰か?
再販売価格拘束契約がある日本では、価格による柔軟なマーケティングができない。電子書籍において再販の取り扱いはどうなるか。「電子書籍は物理的な卸売りを伴わない。そのため、そもそも再販売ということがない」(公正取引委員会の東出浩一取引企画課長)。であれば、アマゾンが価格決定権を持つのが筋--これがアマゾンの方針だ。「出版社は卸売価格を決めてください。売り値を決めるのは私たちです」(アマゾン幹部)。日本の大手出版社が慌てて手を結び、日本電子書籍出版社協会を立ち上げた理由は「抜け駆けしてアマゾンとホールセール契約を結ぶ出版社が現れないように牽制するためだ」(関係者)。
しかしアマゾンも引き下がらない。アマゾンでは出版社と著者が契約書すら結んでいないことを知っている。であればまずは著者と契約を結べばいい。著者の独立の動きに驚いた出版社は「ホールセール契約」を受け入れる--。この筋書きがアマゾンの望む流れだ。ただし個別の著者と契約をするのは面倒。そのため編集者が独立してくれたほうがいい。そんな「ミドルマン(著者の代理人)」と手を結んだ場合にも、ラインナップを揃えることができる。
アマゾンが狙っているのは、いわば出版社の「機能分解」だ。伝統メディア側は慌てて出版社と著者の契約様式の統一などの作業を進め、著者の独立を防ごうとしているが、そう簡単ではないだろう。
2 自由価格化 再販価格の拘束が崩壊
結局は、多くの出版社がアマゾンと電子書籍の「ホールセール契約」を結ぶに違いない。アマゾンは価格を上下させることで、きめ細かいキャンペーンを行えるようになる。
すると次のステップに進む。紙の書籍との価格差について合理的な説明ができなくなるのだ。小売り段階で出版社の指定した価格で売ることを求める、再販契約を支える法的根拠は弱いものだ。公取のスタンスは「出版物における再販売価格の拘束は認めているにすぎない。多くの人が誤解しているが『やっても構いません』というものであって、『やりなさい』ではない」(公取の東出課長)。電子書籍におけるホールセール契約は、紙の書籍にも及んでいくのが「自然な流れ」なのである。