投票前に知ってほしい「政治と金」問題頻発の根本 期待できない自浄作用、有権者にできること

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――政党には政党助成制度によって税金から毎年、巨額の政党交付金が支払われています。それなのに、国会議員たちはなぜ、企業献金や個人献金、政治資金パーティーなどによってお金を集めようとするのですか。そして、「桜を見る会」「河井夫妻による選挙買収事件」「IR汚職」……。近年、政治とカネに関する問題は後を絶ちません。

まず、政党助成金(政党交付金)のことで言えば、あの資金だけでは不十分なのでしょう。企業献金は本来、政党も含めてすべて禁止されるべきです。そうした議論もずっと昔から行われていますが、今も禁止されていません。ですから、企業は企業のために働いてくれる政党に政治献金するでしょう。

例えば、中国のカジノ会社からお金をもらった議員がいましたが、カジノ会社は日本の医療や教育をよくしようとしてお金を渡したのでしょうか。そうではないですよね。「日本でカジノが解禁されるように」とか、「解禁されたら参入できるようにしてほしい」とか、そういう意味でお金を渡していたはずです。そう考えるのが普通でしょう。

「政治とカネ」の事件が絶たないのは、与党の議員や大臣にその権限を悪用させてでも利益を得ようとする企業が存在するためです。そして、それに応じて権限を濫用してでも裏金や賄賂を欲しがる国会議員がいるからです。この関係を絶たない限り、「政治とカネ」の事件はなくなりません。

なぜ政治にはお金がかかるのか

――これはもう、途方もなく困難ですね……。そもそも、「政治にはお金がかかる」とよく言われます。なぜ、そんなにお金がかかるのですか。

確かに政治にはお金がかかります。そのこと自体は否定しません。ポスターを作成するだけでもお金がかかります。ほかの候補者より少しでも見栄えをよくして、少しでも選挙で有利になるようしように、と。そうすると、余計にお金がかかります。

私たちだって、少しでもカッコよく見せようとか、かわいく見せみせようとして、結果、いつの間にかお金がかかってしまった経験はあるはずです。政治家も同じです。事務所を少しでも良い立地に借りたり、少しでも分かりやすいホームページを作成したり。どうしてもお金はかかってしまいます。

しかし、必要以上にカネをかけている政党や議員もいます。「必要以上」とは何か。

例えば、参議・広島選挙区の河井案里候補側が買収に走ったのは、同じ自民党で安倍総理(当時)を「過去の人と」と批判した現職の溝手顕正候補者を落選させ、案里候補を当選させようとして、従来の溝手支持者をカネの力で杏里支持に変えようとしたからです。カネで政治を動かそうとすることこそが「必要以上」ではないでしょうか。

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