「失敗」を「早期フィードバック」と捉え直すべき訳 ナラティブに未来を紡ぎ出す創造的失敗の知恵

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しかし、多く誤るのは人間だ、というわけである。これまでの自動車事故も、ほとんどがドライバーの過失・違反が原因といえる。

一方、多様に絡み合った後者の世界、つまり、「complex(多くの部分と全体が影響し合って変化する)なシステム」と呼ばれる世界では、個々の構成要素の特性だけからは次の振る舞いが予測できない。1つでも情報が欠けてしまうと、まったく予想できなくなる。

さらに、多くの要素が集まることで、それまでになかった性質が「創発」(新たな秩序が形成される)するという世界だ。その意味で、自動運転車の事故は従来とは違ったものとなるだろう。

こうした複雑系から生まれる影響は、新たな機会を探索するようなイノベーション・プロジェクトで顕著になる。それは、多くが未知で、予測不能な未知の空間を旅するのに似ている。

そこで現代のプロジェクトは複雑系を前提に、俊敏に、試行錯誤で進めざるをえなくなる。「わからない」ことを前提に進まないといけない。もし何だかわかっているようなことをやっているなら、イノベーションではないのだ。

これは従来のビジネス教育を受けてきた頭の持ち主には至難のことである。その多くはオペレーションに最適化された思考だからだ。「イノベーションがどのように起きるのかを理解してから取り組みたい」と思うのは当然だ。

しかし、第1回の記事でも紹介した「失敗2(創造の過程でなくてはならない反応)」は必ず起きる。フィードバックがなければ暗闇の中では前に進めないからだ。

「古い組織・システム」のままではDXもうまくいかない

複雑系のモデルは、人間や市場や社会に当てはまる(そのために「複雑適応系」という用語がある)。筆者がかかわってきた知識創造経営では、企業組織を複雑な世界で進化するシステム、つまり、生物の有機体や脳のようなシステムとして捉えている。

それは「共進化」という、組織が環境や関係性とともに進化する考え方だ。今を生きるには、このような組織モデルの視点が役立つ。

『失敗の殿堂』には次のような方程式が出てくる。

NT+OO=EOO

新技術(NT: New Technology)を古い組織(OO: Old Organization)に導入すれば高コストの古い組織(EOO: Expensive Old Organization)になってしまうというわけだ。

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