「失敗」を「早期フィードバック」と捉え直すべき訳 ナラティブに未来を紡ぎ出す創造的失敗の知恵
DX(デジタルトランスフォーメーション)も、デジタル技術や戦略ばかりに目を向けていると、足元の組織が「工業社会」型のままであったりすれば、かえってこれまでよりも複雑なプロセスの鈍重な組織になってしまう。したがって、次のような視点が不可欠だ。
こうして失敗を、もはや「失敗」ではなく、「早期フィードバック」と呼んで、複雑系の中で創造的に活動していくべきだ。逆に、従来の複雑な世界観をそのまま持ち続けていると、綿密な計画を立ててしまい、最終的に大きく失敗(この場合は、「失敗1」:工業社会の失敗、恥ずかしい失敗)してしまう可能性が高くなる。
失敗の結末について考えてばかりいたら、何もできない。しかし、トップやリーダーが自分にイノベーションの経験がないのに、「お前がファースト・ペンギンになれ」「失敗はすべきだ」と、無責任に背中を押すのはいただけない。
そこで失敗しないようにするのではなく、小さな失敗を起こせるようにする、というのが複雑適応系のプリンシプル(原理原則)だ。そこでは、安全な場が世界を輝かせる。
ナラティブで紡ぎ出す未来
VUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)の時代といわれて久しいが、まだまだこうした根本的な時代の変化に鈍感な企業が多いのではないだろうか。そこで単にイノベーションを声高に唱えるのではなく、複雑系の環境の中で生きていく、足元のプリンシプルそのものを見直す必要があるといえる。
ポール・イスケと筆者は、共にこれまでシナリオ・プランニングを研究し、実践してきたが、『失敗の殿堂』でも1章を割いて紹介している。そのエッセンスは、自ら物語る力(ナラティビティ)だ。
複雑で不確実な環境においては、多くの可能な世界を描いておかなければならない。最近、バックキャスティング(未来から現在を逆向きに考える手法)が大事だという声もよく聞かれる。
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