日本人の給料統計に映る「貧しくなった人」の真実 実質賃金は全然増えず格差が一段と開いている
バブル崩壊後の就職が困難だった時代、1993年から2005年の間に社会人になった世代のことを就職氷河期世代と呼びます。正社員になることすら難しかった世代であると同時に、就職できても給与が低くおさえられ、バブル期世代に強い憎しみを抱いているとされるのが都市伝説なのですが、実態はどうなのでしょうか?
グラフはここでも男性サラリーマン同士の比較です。まずグラフで目につくところは、社会人スタート時点の年収水準はバブル組と変わらないという点です。ただその後は徐々にバブル組との差が開き、その状態が15年ほど続いた後、40代に入ってようやくバブル組のラインに追い付きます。その間の差は累計で約600万円、年収換算でいえば15年間ずっと約40万円も低くおさえられてきたことがわかります。
氷河期世代は正社員になれたかどうかが分水嶺
ただし彼らが社会人として育った2000年代というのが日本経済にとってはそもそも最悪の時代で、そこがちょっとよくなりかけた後、リーマンショックが起き、東日本大震災が起きてという連続でした。後述する男女間格差と比較すれば、氷河期世代は「正社員のポジションをつかめるかどうかが大きな分水嶺になった」という格差だと私には読み取れます。
ちなみにここでそれ以降の世代も同じグラフにのせてみました。このグラフを見ると、これまで日本企業が行ってきた給与制度改革の全貌が浮かび上がってきます。それは終身雇用と年功序列が前提だった昭和の仕組みを是正し、就職や転職が盛んな若い世代の給与水準を上げ、逆に40代以降の給与水準を抑えるというのが基本思想なのですが、それでも40代から50代の20年間に給与カーブのピークが来る形は変わっていないのです。
さすがに60歳になると役職定年がはいり、65歳、70歳と会社には残れても給与は大幅に下がるのですが、それでも興味深いことに65歳の平均給与は25歳よりも高いし、70歳の平均給与は新入社員よりも高いと国税庁の統計は語っています。
この結果を言い換えると、
「日本企業の給与システムは、経営者が思っているほどには大きく変わってはいない」
ということです。変化がないのはサラリーマンにとってはいいことに見えますが、大きな変化がないことで、とてつもなく不利を被る人も出てきます。
その象徴といえるのが女性の会社員です。
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