日本人の給料統計に映る「貧しくなった人」の真実 実質賃金は全然増えず格差が一段と開いている

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都市伝説1 バブル入社組は昭和組と比較して損をしている

ドラマ『半沢直樹』で活躍する銀行マンの世代はバブル入社組と呼ばれています。就活は楽勝で、大企業の側は内定者を確保するために豪華なフランス料理をごちそうしたり、内定者研修は豪勢なリゾートホテルで行ったり。いい思いをして入社したとたんにバブルがはじけ、その後、悲惨なサラリーマン生活をすることになった。これが都市伝説です。

では給与の実態はどうなのでしょうか?

民間給与実態統計調査では1980年に社会人になった昭和の会社員と1990年に社会人になったバブル入社組会社員それぞれの、その後の給与グラフを追うことができます。最初にお断りしておきますと、今回の分析では男性サラリーマン同士のグラフを比較します。

「男女平等の時代に、なんて時代錯誤な!」

と感じる方もいらっしゃると思います。そのとおりで、男女平等の時代なのに男女間に給与の不平等が存在していることが統計から非常によくわかります。そこで男女を分けてみないと「世代間格差の実態が見えてこない」という事情があるのです。男女間の不平等については後で整理します。

(外部配信先では図やグラフなどを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

1980年にサラリーマンになった昭和組と1990年にサラリーマンになったバブル入社組のその後の給与を比較すると、昭和組は40歳以降、安定高値の給料をもらえていた一方で、バブル組はどちらかというと頭打ちで40代は低い給与に甘んじていたように見えます。これはバブル組と会話をしているときによく聞くぼやきとも合致しています。

昭和組も50代はバブル組同様に抑え込まれている

そこだけを見ると一見バブル入社組は損をしているように思えますが、実はそうでもないのが面白いところです。バブル入社組の給料が低く抑えられた40代は昭和組では50代に相当するのですが、この昭和組の50代も給料はまっ平になってしまっていてバブル組同様に抑え込まれているのです。結局、バブル組が50代に突入した2020年調査では昭和組の50代とほぼ同じ水準までバブル組が上昇しています。

さらに重要なことですが、実はバブル組は入社時点でそれまでの世代と比較して100万円も初任給が高かったという特徴があります。実は私は1986年入社で年代的にはバブル組に一見近いのですが、給与的には昭和組世代で、就活当時の大企業の大卒初任給はどこも横並びの200万円でした。それが4年間のバブルで高騰したのをみて、

「なんで若い連中は初任給がそんなに高いんだ?」

と不満を感じた世代です。

しかもまだ転職がめずらしい時代だったせいで釣った魚の給与水準に変更はないということで、バブル期に優遇されたのはこれから内定する学生ばかり。私見ですが1986年組ぐらいまでの世代がいちばん20代のサラリーマン時代に割を食った世代ではないかと思います。さて、次の都市伝説を検証してみましょう。

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