米国の経済成長源「イノベーション」を生む2要因 「人口増」だけではない、他国を突き放す強み

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こうしたイノベーションを起こす力が米国経済の成長を促進しています。そして、イノベーションに関して米国に敵う国はほとんどありません。

米国がイノベーションを起こしたことでトップに立つことになった分野の例として、暗号資産で有名になったブロックチェーン技術が挙げられます。かつて、暗号資産やブロックチェーン技術に関しては、米国独占というわけにはいかないだろうといわれていました。当時ビットコインのホルダー数が世界一の日本や、ブロックチェーン技術についての論文を多数発表していたロシアが先行すると考えられていたのです。しかし、そこから米国でイノベーションが起こり、急激な巻き返しが進みました。いまでは米国がほかの国を圧倒的にリードしています。

ではなぜ、米国ではこんなにさまざまなイノベーションが進むのでしょうか。それには「規制のうまさ」「人材の分厚さ」という2つの理由があります。順番に説明していきましょう。

「規制のかけ方」がイノベーションを左右する

まず、米国は規制のかけ方がとてもうまいといえます。社会に悪影響を及ぼしそうなところについてはきちんと規制をかけながらも、イノベーションのために必要な部分については、規制を緩めて自由にやらせる。そのさじ加減がうまいのです。

イーロン・マスクで知られる宇宙ビジネスはその最たる例です。彼が率いるスペースXが、NASAから、月面に宇宙飛行士を着陸させるために必要な機体の製造の委託を受けた、というニュースが2021年4月16日に流れました。スペースXが単独で宇宙開発を行っているのではなく、NASAのような国の機関が、上手にイノベーターの能力を活用して、技術開発を推し進めるのです。

これらのケースからもわかるように、単なる技術力だけでなく、最先端技術を国として育てていく枠組みやコミットメント、気質、文化のようなものが、米国には根付いています。だから、ブロックチェーンはこれまで世界の流れに対して1周遅れくらいだったのが、一気に3周先くらいまで行ってしまったし、宇宙産業に至っては民間のイノベーターの力を上手に活かして、いまでは世界に対して5周くらい先に行ってしまうほど進化したのです。

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