総務省の家計調査を用いて、年間収入の「下位20%」と「上位20%」の家計における「消費支出」の倍率(=高所得層÷低所得層)を求めると、2000年以降は2.1~2.3倍程度となっているが、「教育費」に限定すると4~5倍程度である。そして、金融危機以降は、「消費支出」の格差は緩やかに縮小しているものの、「教育費」の格差は改善がみられない。消費支出の格差縮小は、高所得層の個人消費が減ったことや、おそらく低所得層で共働きが増えたことが背景にあるだろう。
なお、2020年には教育費の格差も急激に改善したような形になっているが、これは高所得層がコロナ禍による行動制約によって塾などの「教育費」を減らさざるをえなかった、つまり使いたくても使えなかったことが背景と考えられる。日本では「教育格差」が大きく拡大しているとはいえないものの、改善もしていないのが実情である。
「所得」より「資産」の影響が大きくなっている
一般に低所得層のほうが消費性向が高く、また、「可処分所得」が増加すれば「家計消費」は増える傾向があるため、「金融所得課税」などの所得に税をかけて高所得層から低所得層へ「再分配」すれば、ある程度の格差は縮小できるだろう。しかし、最近の消費動向は「可処分所得」(フロー)だけでは説明できず、「金融資産」(ストック)が与える影響が大きいという指摘がある 。実際、「可処分所得」と「家計消費」の関係を比較すると、近年(2001年以降)では両者の関係性が薄れていることを確認できる。
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