さらに、「消費支出」を「可処分所得」と「金融資産」の2変数(いずれも前年同期比)によって説明するモデルを作成し推計すると下表のようになった。1981~2000年代のデータでは「可処分所得」と「金融資産」の両方の回帰係数がプラスとなったものの(1%水準で有意)、2001~2019年では「可処分所得」は説明力を失い、「金融資産」のみが有意となった。所得の課税を強化することによってフローだけ「分配」しても十分とはいえず、ストックの「格差是正」も進まなければ個人消費には影響は生じない可能性がある。
むろん、フローを改善することによってストックに影響を与えることは可能である。しかし、過去数十年かけて蓄積してきたストックの格差を急に変化させることは困難である。今回のコラムでは、ストックに課税する「資産課税」強化の議論には踏み込まないが、「金融所得課税」によるフローの改善だけでは大きな変化は得られない可能性が高いということは強調しておきたい。
「教育費」の格差でも「金融資産」が重要に
「家計消費」全体だけでなく「教育費」に限定しても、「金融資産」の格差が重要といえる。
「年間収入」と「金融資産」を5分位で分け、それぞれの「教育費」の水準を比較すると、「金融資産」による格差が大きい。やはり、「教育格差」(≒「親ガチャ」の問題)は、「金融所得課税」によるフロー面の改善だけでは十分ではない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら