北海道「サケ獲れずブリ豊漁」で漁師が落胆する訳 北の「海の幸」の構図に異変、背景に温暖化も

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「はこだて海の教室実行委員会」事務局の国分晋吾さんに活動の狙いと反響を聞いた。

「函館では5年ぐらい前からブリの水揚げが増えています。そうした中、海洋環境の変化を伝えるためには、地産地消も兼ねた食文化を通じて情報発信していくことが重要だと考え、2020年にプロジェクトを立ち上げました。昨年は、子どもが食べやすく学校給食にも提供できるということでブリたれカツに挑みました。今年は、やや脂が少ない小型のブリは節に向いているということで、羅臼の加工業者さんにブリ節をつくってもらいました。そしてブリのアラや豚肉・鶏肉のひき肉などで取ったスープにブリ節を加えた函館ブリ塩ラーメンを開発し、試食会でも好評でした」

 10月1日から函館市内の飲食店やスーパーでさまざまなブリ料理を提供する「函館ブリフェス」を昨年に続き開催。多くの市民が新たな地元の味・函館のブリを堪能した。

「名物のイカとともにブリが新たな函館の魅力として定着していってほしいですね」(国分さん)

ブランド「ブリ」で差別化も

一方、日高のひだか漁協では、地元でとれたブリを「三石ぶり」「はるたちぶり」というブランド名で出荷。船上での血抜き処理、脂肪率の計測などを行い、高脂肪率の大型サイズを厳選するなど、ブランディング戦略の強化で差別化を図っている。

このほか、道内では北海道ならではの「ブリザンギ」も人気だという。函館の水産会社がオンラインで発売しているので取り寄せも可能だ。

スーパーでサケ、ブリともに購入し、それぞれ牛乳に浸した後でフライにしてみた。どちらも衣はサクサク、中はふっくらとジューシーに仕上がった(写真:筆者撮影)

サケ、サンマ、イカといった北海道を代表する魚の水揚げが落ち続ける中、日増しに存在感を増している北海道のブリ。サケに代わって北海道を代表する魚となる日がくるのだろうか。サケはかつてのニシンのような運命をたどってしまうのだろうか。

海洋環境の激変による生態系への影響を「地域の問題」として捉えていてはできることに限界がある。例えばサケの孵化事業についてみると、サケの不漁が続く中で、地元漁業者による孵化事業への拠出金が減少している。孵化事業関連への国の予算を大幅に増額するなどの措置も必要だろう。

資源保護とともに次世代に貴重な食文化、水産文化を残すためにも知恵を絞っていきたいものである。これは地域の活性化にもつながる重要なテーマである。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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