北海道「サケ獲れずブリ豊漁」で漁師が落胆する訳 北の「海の幸」の構図に異変、背景に温暖化も
毎年、精力的な孵化放流を行っているのに、なぜ漁獲量が低迷しているのか。
サケは生まれ故郷の川に帰って産卵する。自然産卵の稚魚や放流された稚魚は春から初夏にかけて海に入り、オホーツク海で夏から秋を過ごして成長。北太平洋で越冬し、翌年ベーリング海に入る。秋になるとアラスカ湾で冬を過ごし、春になるとベーリング海に。これを繰り返し、成熟した親魚となって故郷の川に戻ってくる。このサイクルの中に大きな異変が起きているということは間違いなさそうだ。
サケ不漁の背景に「4つの説」
水産関係者や漁業関係者の間で指摘されている原因をまとめてみると、次のような仮説が浮かび上がってきた。
① 沿岸部の海水温の異変 放流時期である春先の沿岸部の冷たい海水温と、初夏の急激な海水温上昇に対応できずに稚魚が大量に死んでしまう。稚魚にとっての好適水温帯(5度から13度)の期間が短くなっている。
② 漁獲期の海水温上昇 沿岸の海水温が秋になっても高く、サケが沖合や深いところに避難してしまうため、定置網にかからない(逆に温かい水温を好むブリが定置網にかかっている)。
③ 母川回帰率の低下 1996年には5.7%だった生まれた川へ帰ってくる母川回帰率(北海道)が2016年は2.6%、2019年は1.6%にまで低下している。
④ エサ不足 海水温の上昇で分布域がサバなどと重なり、サバなどに負けてサケの稚魚の生存率が悪化。
海水温をはじめとする海洋環境が変化する中で、複数の要因が絡んでいるのだろう。
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