「コロナ後の生き方」に鈍感すぎる日本人の大問題 「ライフシフト2」著者が続編で言いたかった事

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日本が平均寿命を大きく延ばしたことの価値は大きい。今回のパンデミックで私たちが痛感させられたことの1つは、健康の大切さだった。

2020年、日本のGDP(国内総生産)は5%縮小した。これは、感染拡大を受けて人々の行動が変わり、政府が人命を救うための措置を講じた結果である。お金は確かに重要だが、人々はそれ以上に健康を重んじているのだ。その意味で、長寿化に関して日本が成し遂げた進歩は称賛すべきものと言える。

しかし、長寿化で目覚ましい成果を挙げたからこそ、日本はいっそう経済のあり方を大きく変える必要に迫られている。人々がただ長く生きるだけでなく、長く生産性を保ち続けるために、それが不可欠なのだ。

いまどの国でも高齢者人口が増大しているが、そのペースが日本ほど速い国はない。日本は世界のどの国よりも、長寿化と健康の改善を経済成長に結びつけ、いわば「長寿の配当」を経済面でも獲得する必要がある。

60歳を超えた高齢者の雇用を増やすだけでは十分でない。いまから最も長く生きて、テクノロジーの影響により生活と仕事とキャリアが大きく変貌する可能性が最も高いのは、若い世代だ。本書で、金沢市に住む20代のカップル、ヒロキとマドカを大きく取り上げている理由はここにある。

「長寿の配当」を実現するには、新しい人生のあり方を構築することが求められる。人々が長い人生を金銭面で支えるために、長期の職業人生を送れるようにし、健康な人生を生きるために、柔軟な働き方とキャリアの道筋を選べるようにする必要がある。

具体的には、人々がスキルを錆びつかせず、アップデートする機会を用意し、子どもと老親の世話をする時間を確保できるようにしなくてはならない。ひとことで言えば、本当に大切なものを重んじて生きるために、バランスの取れた生き方を実践できるようにすべきなのだ。

自分の未来への投資をしよう

こうしたことは社会の長期的な変化に関わる問題だが、パンデミックが始まると、人々はこれらの問題を強く意識せざるをえなくなった。古いやり方が通用しなくなり、新しい生き方と働き方が求められるようになって、多くの人はもっとよい生き方や働き方がないかと考えはじめたのだ。

その点、この危機を通じて、人類が病気に弱いことが如実に示されただけでなく、今日の人類が過去の世代と同様、現状を改善し、変化に対処するための発明の能力をもっていることも実証された。本書ではそうした発明の能力について論じている。

もっとも、経済的な「長寿の配当」を実現し、テクノロジーが人類に恩恵をもたらすようにするためには、企業と政府も大きく変わらなくてはならない。この点も本書の大きなテーマだ。

しかし、これも今回のパンデミックで見えてきたことだが、健康と資金とスキルと生き甲斐と人間関係を維持することは、ますます個人の責任になってきている。このような新しい状況は、現在の人生を形づくるうえで胸躍る可能性を生み出すが、その半面でみずからの未来に対して自分で投資する必要性も大きくなる。

コロナ後の時代は、そのような長い目で見た投資について考える好機になるかもしれない。あなたがそうした検討をおこない、(どんな人生を生きるにせよ)未来に備えるうえで、この本が役に立てば幸いだ。

アンドリュー・スコット ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授

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Andrew Scott

ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授、スタンフォード大学ロンジェビティ(長寿)センター・コンサルティング・スカラー。ロンジェビティ・フォーラム共同設立者であり、英国予算責任局のアドバイザリーボードと英国内閣府の栄誉委員会メンバーも務める。邦訳された著書に『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』がある。

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