ヤクルト高津臣吾監督「去年と違う」強気な理由 今年は心の底から燃えるゲームが続いている
――さて、今回は「力を与える言葉」という点について伺いたく思います。9月7日の試合前のミーティングが球団公式ホームページにアップされました。選手たちを前に、1993(平成5)年日本シリーズ第7戦の試合前に野村克也さんが話した「勝負は時の運だ」という言葉を紹介していました。このタイミングで、このエピソードを選手たちに話した意図を教えてください。
高津 「今このタイミングで、この話をしよう」という具体的な思いがあったわけではないですけど、「選手たちが硬くなったり、緊張するようなことがあれば、どこかでそれをほぐすための言葉をかけてあげなくちゃいけないな」ということは、以前から考えていました。あのタイミングがよかったのかどうかはわからないけど、「伝えなくちゃいけないことはあるな」とはずっと思っていました。
――あのミーティングの最後には「オレたちは絶対大丈夫だ」「絶対に崩れない」と力説されていました。これは、今監督が一番伝えたいこと、訴えたいことなんでしょうか?
高津 そうですね。まずは「勝って浮かれることなく、負けてしり込みすることなくあろう」ということを伝えたかった。そのうえで「つねに前向きに予習をして復習をして、明日も頑張ろう」ということを伝えたかったんです。その思いを込めたのが「絶対大丈夫」という言葉で、僕なりの表現になりました。
僕たちは命を懸けてグラウンドに立っている
――「絶対に崩れない」というのは、どんな意図からの発言ですか?
高津 チームの輪というもの、人と人とのつながりというもの。これは、この時期にはさらに重要になってきます。選手にはそれぞれ役割があります。自分の役割をきちんと理解することはもちろん大切だけど、他の人の役割、仕事をきちんと理解し合うことができれば、チームの輪は決して崩れない。その辺りは強く伝えたいことでした。
――このミーティングでも「チームスワローズ」というフレーズが登場します。この連載においても、監督がしばしば口にするフレーズです。今、この時期だからこそ「チームスワローズ」というのが重要になってきますね。
高津 グラウンドに立っている選手たちだけが「チームスワローズ」なのではなく、それを支える多くのスタッフ、そして応援してくださるファンのみなさん、それぞれが大切なチームの一員なんです。その点は改めて忘れたくないという思いは、僕にはあります。
――さて、9月13日の対中日ドラゴンズ戦では9回表に審判団の不明瞭な判定の下、不完全燃焼のままチャンスを潰して0対1で敗戦しました。監督としては珍しく、執拗な抗議をした後、興奮状態のまま引き上げていくこととなりました。猛抗議の後、ベンチに待機する選手たちに声をかけた後に引き上げていく。「勝利に対する執念」を見せつけた場面だと思います。選手たちを鼓舞するような意図はありましたか?
高津 別に引き際を計算して抗議をして、不満を抱えつつも引き上げたわけではありません。僕の正直な思いとしてはああいう終わり方に納得ができずに抗議をしただけです。命まで取られるわけじゃないけど、僕たちは命を懸けてグラウンドに立っています。僕が抗議をすることで、判定が覆るとは思っていませんでした。でも、野球人というか、大げさな言い方になるかもしれないけど、人として許せない部分がたくさんあった。だから、ああいう抗議となっただけです。