マンション修繕費問題「ドローン」が救う納得の訳

人手に頼ってきた点検・維持管理をDX化する技術

2012年の笹子トンネル天井板崩落事故のあと、政府はインフラ長寿命化基本計画を策定した。道路法を改正し、2014年度から5年ごとに橋梁、トンネル、道路附属物などの点検を義務付けている。定期的な点検・診断を実施し、適切なタイミングで必要な対策を講じることで長寿命化を図り、インフラ投資のトータルコストを削減するのが狙いだ。これを機に、橋梁などのインフラ分野ではドローン点検の導入が進み出した。

建築分野でもドローン点検の取り組みは始まっているが、まだ本格導入には至っていない。3年ごとの目視検査は双眼鏡などを使った調査が認められているため、費用を払ってまでドローン点検を実施する特定建築物の所有者・管理者が少ないこと。全面打診に代替する方法として2008年に導入された赤外線設置法がドローンからの撮影では十分な精度が確保できないとして認められていなかったからだ。

しかし、今年6月に閣議決定した政府の成長戦略実行計画で「外壁調査を行う赤外線装置を搭載したドローンについて(中略)制度改正を行い、来年度以降、建築物の定期検査における外壁調査で使用可能とする」ことが盛り込まれた。国交省でも「ガイドラインを策定して来年度には示したい」(建築指導課)と、本格導入に向けて準備を開始した。

ドローン点検を提供するベンチャー企業

東日本大震災を体験してドローンの外壁点検サービスを提供しようと2016年に起業したスカイエステートの青木達也社長は、「すでに東京都など一部の自治体では赤外線のドローン点検を認めていたが、国が正式に認めれば需要は一気に拡大する」と期待する。

同社にはサンフロンティア不動産が出資。今年5月に日鉄興和不動産が業務提携し、ドローン点検の本格導入に向けた検証を進めている。これまでにマンションやオフィスビルなど300棟近い建物でドローン点検を実施しているが、まだ実績が少ないのが課題だ。

「施工会社による外壁保証は通常は6年程度なので、国や自治体の基準より多い頻度での調査が必要だ。しかし、従来の方法ではコストも手間もかかり、機動的ではない。より安全な建物管理を実現するためも、ドローン点検の効果を検証し、点検精度の向上を図る必要がある」(日鉄興和不動産経営企画本部経営企画部長・稲垣修氏)

【2021年9月29日20時34分 追記】記事初出時、日鉄興和不動産に関する記述に誤りがありましたので、上記のように修正しました。

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